911に迫った直線加速 BMW 2002 ターボ 小さなMの魔力(1) 見違えた優雅なクーペ

公開 : 2025.12.27 17:45

代々続く小さな「M」 911級の加速力を持つ2002 ターボ 完全なホモロゲ・モデルの初代M3 2代目M3と同じ直6のZ3 Mクーペ 狂気じみた1シリーズ Mクーペ UK編集部が4台の魅力を探る

「M」の頭文字を得る前に生まれた2002

なんと心躍る4台なのだろう。カメラマンのジェイソン・フォンも、コードネームをつぶやきながら無心にファインダーを覗く。欧州車初の量産ターボモデル、2002 ターボにE30型M3、Z3 Mクーペ、1シリーズ Mクーペまで、いずれも至高の小さなBMWだ。

1973年発表の2002 ターボは、「M」の頭文字を得る前に生まれた。通常の2002との差別化に用いられたのは、レッドとパープル、ブルーの鮮やかなトリコロール。ノイエクラッセ・シリーズの後を継ぎ、ベースモデルは1966年に発売されている。

手前からレッドのBMW M3 エボIIと、イエローのBMW Z3 Mクーペ、ホワイトのBMW 2002 ターボ、オレンジのBMW 1シリーズ Mクーペ
手前からレッドのBMW M3 エボIIと、イエローのBMW Z3 Mクーペ、ホワイトのBMW 2002 ターボ、オレンジのBMW 1シリーズ Mクーペ    ジェイソン・フォン(Jayson Fong)

BMWのモータースポーツ部門は、ワークスレーサーへインジェクション・システムを採用し、最高出力を200ps以上へ上昇。1968年の欧州ツーリングカー選手権では、2.0L未満クラスの優勝を奪う戦闘力が与えられた。

翌1969年には、2002 tiKへ進化。KKK社製ターボで280ps以上へ増強され、圧倒的な速さを披露した。

ポルシェ911に迫った直線加速

サーキットでの速さは、市販車にも反映された。1968年に129psの2002 tiiが登場するが、2002 ターボは更にその上を行った。M10型2.0L 4気筒エンジンは、KKK社製ターボを獲得。圧縮比を9.5:1から6.9:1へ落としつつ、高圧燃料ポンプが組まれた。

かくして最高出力は172psで、最大トルクは23.8kg-m。トランスミッションはゲトラグ社製の4速マニュアルで、リミテッドスリップ・デフも備わった。AUTOCARの計測では0-97km/h加速を7.3秒でこなし、当時のポルシェ911に迫る直線加速を得ていた。

BMW 2002 ターボ(1973〜1974年/欧州仕様)
BMW 2002 ターボ(1973〜1974年/欧州仕様)    ジェイソン・フォン(Jayson Fong)

サスペンションは、前がマクファーソンストラットで、後ろがセミトレーリングアーム。強化スプリングとアンチロールバーが、頼もしいペアを組んだ。ブレーキは、前が4ポッドキャリパーのディスク。後ろはドラムだが、通常の2022より大径化されていた。

今回の1台は、英国のミュンヘン・レジェンド社が販売中の1974年式。細部まで、オリジナルが貫かれている。

やる気溢れる雰囲気へ見違えたボディ

異彩を放ったのは、勇壮な姿。塗装はポラリス・シルバーかシャモニー・ホワイトが定番で、スチール製のフロントバンパーは外され、背の高いフロントスカートが空気を切り裂いた。発表時に貼られた文字の反転した「turbo」ステッカーも、話題になった。

ホイールは13インチで、幅が5.5Jのスチール。FRP製オーバーフェンダーがボルトで固定され、デザイナーのヴィルヘルム・ホフマイスター氏がまとめた優雅なボディは、やる気溢れる雰囲気へ見違えていた。

BMW 2002 ターボ(1973〜1974年/欧州仕様)
BMW 2002 ターボ(1973〜1974年/欧州仕様)    ジェイソン・フォン(Jayson Fong)

インテリアも、ロールケージがないだけで、かなりシリアス。サイドボルスターが大きく立ち上がったレントロップ社製シートが、しっかり腰を支えてくれる。座面は低く、3スポークのステアリングホイールが、高めの位置に伸びる。

正面のメーターは、通常の2002と同じく3枚。ヒーターのスイッチとヘッドライトのノブが並ぶ、簡素なダッシュボード中央にブースト計が追加されている。

記事に関わった人々

  • 執筆

    サイモン・ハックナル

    Simon Hucknall

    英国編集部ライター
  • 撮影

    ジェイソン・フォン

    Jayson Fong

    英国編集部フォトグラファー
  • 翻訳

    中嶋けんじ

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

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