ポルシェ、カーボンニュートラル燃料の使用拡大を予測 2030年までに大幅増の見通し

公開 : 2024.08.28 18:05

ポルシェは合成燃料「eフューエル」の使用量が2030年までに大幅に増加すると見込んでいる。既存の自動車のCO2排出量を減らす手段として期待を寄せる。

eフューエル使用量拡大

ポルシェは、消費者や政府からの支持が高まっていることから、2030年までには合成燃料のeフューエルがガソリン総使用量の「かなりの割合」を占めるようになると考えている。

同社はeフューエルの開発に多額の投資を行っており、HIFグローバル社をはじめとするパートナー企業と協力してチリで試験生産施設を立ち上げた。eフューエルの実現可能性に疑問が持たれる中、カーボンニュートラルな方法での大量生産を目指している。

ポルシェ911カレラGTS
ポルシェ911カレラGTS

欧州連合(EU)は現在、2035年以降も欧州で内燃機関(ICE)車を販売することを認める意向だが、それはカーボンニュートラルなeフューエルで走る場合に限られる。しかし、業界の一部では、後者の要件は実現不可能であり、事実上のICEの禁止につながりかねないと懸念している。

ポルシェは、既存の自動車からの排出ガスをいかに削減するかに重点を置きながら、eフューエルの大規模商業利用の可能性を示そうとしている。何百万台もの既存のICE車は今後も長く使用され続ける見込みで、eフューエルが環境への影響を減らす重要なステップになると考えているのだ。

チリにある試験生産施設は再生可能エネルギーを使用し、現在、ポルシェ・スーパーカップ・レースシリーズをはじめ多くの用途に向けてeフューエルを生産している。

ポルシェは当初、eフューエルをEVの直接的な代替品としてではなく、古い自動車を長く走らせるための手段としてとらえていた。

しかし、研究開発部門の責任者であるミヒャエル・シュタイナー氏は、この試験生産プロジェクトの成功と、EVの代替品への関心の高まりが、それを変える可能性があると語った。

「このプロジェクトを始めてから、お客様や政治家など、より多くの人々がeモビリティを推進するだけでは不十分であると気づいたのです。メインの路線はEVですが、まだ増え続けている既存の膨大な数のICE車についても考えなければなりません」

「誰もが段階的に新車をバッテリーEVに置き換えなければなりません。しかし、自動車や船舶、飛行機などに投入している化石エネルギーのすべてを、どのように代替することができるかを考えなければなりません」

「これはeモビリティへの優れた追加戦略です。既存の自動車に対してできることなので、より迅速な方法で環境に貢献できると考えています」

チリで進む試験生産

シュタイナー氏は、ポルシェのeフューエル工場が「ロールモデル」となり、eフューエルの生産が拡大されるべきだと主張する。eフューエルだけで走るように自動車を切り替えるのではなく、「少しずつ、ガロン単位で、化石燃料をeフューエルで代用することができる」と言う。

「要点は、何トンの化石燃料を置き換えるかであって、どの方法で置き換えるかではありません。バイオ燃料と同じように、混合燃料から始めることもできます。重要なのは、化石燃料の使用量を削減することです」

南米チリで稼働するeフューエル試験生産施設の風力発電所
南米チリで稼働するeフューエル試験生産施設の風力発電所

また、EV販売台数の伸びが最近鈍化し、ポルシェなどのメーカーがICEの使用を続けるようになったことも、eフューエルへの関心の高まりにつながっていると述べた。

「ますます多くの支持を得ています。大きな車輪を動かすにはまだ長い道のりですが、もしそれを推し進めることができれば、2020年代の終わりまでには、eフューエルがかなりの割合で使用されるようになるかもしれません」

ポルシェは現在、チリのeフューエル工場に新しい直接空気回収(DAC)施設を追加する準備をしている。メイン工場から回収した熱エネルギーを使用して、既存の風力発電と太陽光発電を補完する予定だ。

「これにより、eフューエルに必要なCO2を周囲の空気から得ることができます」

「それが実現すれば、太陽と風力からエネルギーを得て、大気から必要な要素を得るという循環型モデルになります。そうすれば、化石燃料の生物学的サイクルに合致する循環テクノロジーが得られますが、それには何百万年もかかります」

記事に関わった人々

  • 執筆

    ジェームス・アトウッド

    James Attwood

    英国編集部ライター
  • 翻訳

    林汰久也

    Takuya Hayashi

    平成4年生まれ愛知在住。幼少期から乗り物好き。住宅営業や記事編集者といった職を経て、フリーランスとして自動車メディアで記事を書くことに。「誰も傷つけない」「同年代のクルマ好きを増やす」をモットーにしている。イチゴ、トマト、イクラなど赤色の食べ物が大好物。

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