メルセデスから25台の浮気? ブラバス900 ロケットRへ試乗 70mmワイドで900馬力の911

公開 : 2024.08.28 19:05  更新 : 2024.08.28 20:09

ドイツの過激なチューナーの手で、900馬力が引き出されたポルシェ911 カーボン製ボディキットで70mm拡幅 運転体験はターボSの延長 素晴らしい乗り心地と安定性 英編集部が評価

同社歴代で最もダイナミックなクルマ

ドイツのブラバスが、ポルシェ911を選んだ。このチューナーはメルセデス・ベンツと手を組み、スーパーカーを圧倒するパワーをサルーンやクーペに与えてきた。スマート・ブラバスという、小粒な例も存在したが。

これまでをご存知なら、浮気したように聞こえるかもしれない。だが、911 ターボSをベースにした900 ロケットRは、軽率な考えで作られたわけではない。25台の限定数や、54万9130ユーロ(約9116万円)という桁違いの金額も。

ブラバス900 ロケットR(欧州仕様)
ブラバス900 ロケットR(欧州仕様)

むしろ、以前からポルシェをベースにしたいと考えてきたらしい。特別な911の誕生は、時間の問題だったといえるだろう。

一方で、ドイツ北西部のボトロップへ構えたワークショップには、作業待ちのAMG GT 4ドアクーペやSクラスEクラスが所狭しと並んでいた。ブランドの軸が、メルセデス・ベンツにあることは変わりない。

チューブラーシャシーにGクラス風のカーボンファイバー製ボディを被せた、シリアスなクローラーも仕上げを待っていた。ブランドのユーモアが垣間見れる。

911が選ばれた理由は、複雑ではない。シャシーの敏捷性やグリップ力で、ポルシェが優れるとブラバスは判断していた。同社歴代で、最もダイナミックなクルマを作ろうと考えたからだ。

ターボSがベースになった理由も明瞭。カレラは、ワイルドさが足りない。GT3は、サーキット志向過ぎる。どちらも、片手運転しながら300km/hで走れるという、ブランドのコンセプトには適さない。

しかし、ターボSなら合致する。強力で安定性が高く、高級感も不足ない。

全幅は70mmワイド 最高出力は900ps

最も大胆に改造され、強力に仕上げられたモデルに、ブラバスは「ロケット」という名前を与える。その最新作が、この900 ロケットRだ。

チューニングは、内外の広範囲に及ぶ。911 ターボSのボディパネルは剥がされ、全幅が70mm広がるカーボン製ボディキットが組み付けられる。鍛造ホイールのオフセット値で、タイヤは外に張り出される。

ブラバス900 ロケットR(欧州仕様)
ブラバス900 ロケットR(欧州仕様)

ボディサイドには巨大なエアインテークとエアアウトレットが開けられ、大量の空気が流される。リア側には、滑らかな曲線のダックテール・スポイラーが載る。かなり目立つ容姿なことは間違いない。

ブラバスは、美しさが多くの顧客の重視するポイントだと認めている。だが同時に、空力性能もしっかり検証されている。ドイツ・ケルンにあるトヨタの風洞実験施設を利用し、ダウンフォースを若干減らしつつ、高速安定性を高めたという。

3745ccの水平対向エンジンには、インコネル製エグゾーストと大径ターボ、専用ECUなどが与えられる。最高出力は、モデル名の通り900ps。最大トルクは101.8kg-mへ引き上げられる。

そもそも、911 ターボSは公道で最も速く目的地へ辿り着ける1台だったが、ブラバスは以前から呆れるほどのパワフルさを追求してきた。ちなみに通常の911 ターボSは、650psと81.4kg-mだ。

ビルシュタイン社製のダンパー・レートは、若干引き締められている。オリジナルのドライブモードは、完全に機能するという。

記事に関わった人々

  • 執筆

    リチャード・レーン

    Richard Lane

    英国編集部ライター
  • 翻訳

    中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

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