レクサスRC F vs BMW M4 vs アウディRS5

公開 : 2015.02.13 23:40  更新 : 2017.05.29 19:32

ただ、これこそがRS5の持ち味というもの。徹底的に機械的な完成を追い求めた結果もたらす冷徹さだと筆者は判断した。十分に熟成しているといっていい。

対するM4は、やはりFRのBMWの例に漏れず、じめじめとした路面の上でも嬉々として鼻先の向きを変えていく。リア・アクスルは悪天候など知るものか、と言わんばかりに力強く路面を蹴り進める。後ろ足が前足を踏み越えんとする、俊足の獣を思い出すほどである。

さらに拍車をかけるのが7速のM DCTギアボックス。他のグレードのギアボックスと比べると、おそらく意図的にラフな仕立てにしたこちらは、確かに変速の度にショックを伝えてくるが、それがまた迫力に拍車をかけている。

ステアリングは軽めに設定されているけれど、その切れ味たるや、とてつもなく鋭い。これには理想的な重量の配分とエンジンの搭載位置が大いに影響していることは言うまでもないだろう。

RS5のようなV8の雄叫びはない。ただし鼻先に3.0ℓのストレート6がおさまっていることは明確に感じ取れる。7000rpmからうえででもニードルの動きは衰えることはなく、じつに小気味よくかつ痛快にエンジンは吹け上がる。ターボらしくない、というのが筆者の見解だ。

ターボ・エンジンらしい感覚を唯一もたらすのは、1850rpmで56.1kg-mもの最大トルクが流れ込んだ時のみ。この回転域のパンチ力たるや、半端ではない。3台中唯一10km/ℓを超える燃料消費率も大きな魅力だ。

上記2台の強烈な印象に比べるとRC Fはどこか薄味。RS5と同じV8といえども、獰猛な様子は希薄であり、4000rpmから下では低く静かにエグゾースト・ノートが響いているのみにとどまる。

アップ・シフトもごく一般的なATよろしく穏やかな類。ペダル・レスポンスは、ほんのわずかな足元の操作には無頓着なようだ。

リバウンド時の収束は意図的に抑えている様子。けれども、レクサスの他モデルが一様に同じような姿勢を好むことからも、特に意外なことではない。おそらく威厳を求めた結果なのだろう。

エンジンの回転マナーはRS5ほど素早くはなく、M4ほど炸裂感を伴うものではない。ただし高回転域のV8ユニットの存在感は一人前であり、大気を震わすようなエグゾースト・ノートは、痺れにちかい気持ちのよい感覚をもたらす。

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