唯一、ピークディストリクトの山道をフルに使ってもなお余りある力強さを披露したモデルであり、同時に限界がなかなか見えないパワー感にときめくことができた。

ただし4輪がグイグイと地面を蹴っていく感覚はRS5のほうがはるかにうえ。1765kgという車重をまざまざと感じざるを得ないシチュエーションも多かった。また思い通りの変速を行いたければ、シフト・パドルで自らが操作した方がラグを感じずに済む。

反面もっとも光る点は、よじれることをまったく知らないタフなシャシーである。このおかげで恐る恐るコーナーに向かうようなことはなく、フロント・タイヤがどのような角度で路面に接しているのか、あるいはあとどれくらいでリア・タイヤがスライドし始めるのかが非常にわかりやすい。

テスト車両にはオプションのトルク・ベクトリング・ディファレンシャルも備わっていたため、有効に駆動力をタイヤに与え分けていることも、手に取るように感じとることができた。

結論

RS5との勝敗を分けたのは、限界点に近づいた際のアジャスタビリティとなめらかなステア・フィールである。このおかげで後輪が滑りはじめてからの調整も実に行いやすかった。

ただし最後まで、RC Fは大型のGTを目指しているのか、あるいはスリリングなスポーツカーを目指しているのかがはっきりしなかったのは残念。後世に語り継がれるクルマというよりも、トヨタにしてはまぁまぁナイスなクルマ止まりの印象は拭えない。

RS5は ー少なくとも今回のテストではー 美味しさの賞味期限が近くなっているように感じた。たしかに素直で、粘り強く、信頼関係を築きやすいうえに、V8ユニットはこれ以上ない熟成の域に達しているのだけれど、走り終えたあとにキーを返却したくないという気持ちにまではなれなかった。

ただし、次期モデルの発表はそう遅からずやってくるはずだ。この世代で、M4やRC Fにこれだけ張り合っていけるのだから、これから先の発展にはどのメーカーも注意した方がよさそうだ。