AMG CLE 53 x CLK 63 AMGブラックシリーズ(1) ワイドフェンダーに秘めた熱い刺激

公開 : 2025.03.01 09:45

C209型CLK 63 AMGを徹底チューニング

ベースとなったのは、C209型CLK 63 AMG。6.2L自然吸気V8エンジンは26ps増強され、トランスミッションとブレーキ、ステアリング系はアップデートされた。エンジンルームには補強材が追加され、各部はカーボンファイバーへ置き換えられた。

手動で調整可能なサスペンションが与えられ、左右のタイヤの間隔、トレッドは前で75mm、後ろで66mm広げられている。その結果、少しやりすぎにも思えるフェンダーラインが必要となったのだ。

メルセデス・ベンツCLK 63 AMGブラックシリーズ(海外仕様)
メルセデス・ベンツCLK 63 AMGブラックシリーズ(海外仕様)    マックス・エドレストン(Max Edleston)

リアシートは撤去され、カーボン製プレートで塞がれている。不要なスイッチ類は省略され、車重はペースカーと同値に仕上げられた。パーキングセンサーも付いていない。価値を考えると、駐車時には後ろの見張り役が欲しいところ。

しかしステアリングホイールを握ってすぐには、2000年代に絶賛された、サーキット由来の高性能モデルだとは実感しにくい。エンジンの始動時は豪快なひと吠えで目覚め、ボディパネルを震わせるとしても。

ステアリングホイールのデザインは、その頃のメルセデス・ベンツで一般的だったもの。ウイングやオーバーフェンダーが、ドアミラーの視界を大きく遮ることもない。

段付きのゲートと、少し扱いにくいレバーで操作するのは、7速オートマティック。低速域ではのんびり仕事をこなし、変速には1拍のラグを伴う。

猛烈に速いが、上質なメルセデス・ベンツ

それでも、シュツットガルト製の専用軽量フライホイールが、ガラガラとノイズを撒き散らす。少し速度を高めれば、CLK 63ブラックシリーズのすべてが、走りへ意欲的なことがわかる。最高のドライバーズカーらしく、ベールが解かれる。

歩くようなスピードでも轟音が放たれ、筆者は笑顔を抑えきれない。ドライブモードと呼べるのは、7速ATのコンフォート、スポーツ、マニュアル程度。ESPのボタンは、オン/オフを切り替えるだけ。すぐに、最高出力507psの臨戦態勢は整う。

ホワイトのメルセデス・ベンツCLK 63 AMGブラックシリーズと、グレーのメルセデスAMG CLE 53 4マティック+
ホワイトのメルセデス・ベンツCLK 63 AMGブラックシリーズと、グレーのメルセデスAMG CLE 53 4マティック+    マックス・エドレストン(Max Edleston)

乗り心地のしなやかさには、舌を巻く。最近は、公道を走らせると背中の髄が縮むような、過酷な振動を伴う例も珍しくない。ところが過激な見た目とは裏腹に、CLK 63ブラックシリーズはグレートブリテン島の荒れたアスファルトをなだめてくれる。

猛烈に速いが、紛れもなく上質なメルセデス・ベンツだ。バケットシートへ身体をくくり、数100kmを走り込んでも、最高の気分が続くかもしれない。

燃費は大きなSUV並みだとしても、走行会が開かれるサーキットへ問題なく自走できそうだ。到着した頃にはクタクタ、なんてことはないだろう。むしろ、目覚まし時計をいつもより早くセットして、遠回りしたいと考えるかも。

地球上で最後の、珠玉の1台、といった様相。ブレることなく、何にもとらわれず、運転の楽しさに焦点が向けられている。意表を突かれるほど快適でありながら、甘ったるいクーペではない。

この続きは、AMG CLE 53x CLK 63 AMGブラックシリーズ(2)にて。

記事に関わった人々

  • 執筆

    スティーブン・ドビー

    Stephen Dobie

    英国編集部ライター
  • 撮影

    マックス・エドレストン

    Max Edleston

    英国編集部フォトグラファー
  • 翻訳

    中嶋けんじ

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

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