「4モーター」BMW M3の試験台 ビジョン・ドライビング・エクスペリエンスへ同乗 トルクは1831kg-m

公開 : 2025.03.02 19:05

2021年のシステムより、最大10倍も高速

「クルマの主要な走行機能のすべてを、ハート・オブ・ジョイは制御します。その開発には、技術力を高める必要があります。シングルモーターのクルマでも、クワッドモーターのクルマの制御技術によるメリットは受けられます」

アクセルペダルを踏み込んだ情報は、従来ではパワートレインの制御系へ送られ、ステアリングホイールやブレーキペダルへの入力は、動的特性の制御系へ送られていた。これを連携させるには情報通信が必要になり、極めて僅かなラグが生じていた。

BMWビジョン・ドライビング・エクスペリエンス(プロトタイプ)
BMWビジョン・ドライビング・エクスペリエンス(プロトタイプ)

ハート・オブ・ジョイは、それを1つのユニット下で管理する。BMWによれば、2021年の市販車へ搭載されていたシステムより、最大10倍も高速に処理されるとか。超高性能なVDEへ対応できれば、あらゆるモデルで機能するのだろう。

現在の殆どのバッテリーEVでは、摩擦ブレーキは動的特性を司るユニットが制御している。一方で、回生ブレーキはパワートレイン側で処理されていた。そのため、回生から摩擦への移行時などに、僅かな不自然さが伴うことが少なくなかった。

「回生ブレーキの潜在能力を最大限に引き出す上で、パワートレインの制御システムだけでは不充分です。動的特性側のシステムも一緒に働く必要があります」。タルマイヤーが説明する。

回生ブレーキでスタビリティを高める

「回生ブレーキを利用して、スタビリティを高めたいと考えました。(旋回時の)ヨーレートや、前後左右の加速度など、安定性に関わる情報を素早く取得することで、挙動を変化させることができます。回生量を変えることで、安定性も調整できるんです」

さらにハート・オブ・ジョイは、ブレーキペダルへの入力を処理し、停止へ最も高効率な方法を演算。可能な限り、回生ブレーキだけでの減速を可能としている。その結果、エネルギー効率は最大で25%も改善するそうだ。

BMWビジョン・ドライビング・エクスペリエンス(プロトタイプ)
BMWビジョン・ドライビング・エクスペリエンス(プロトタイプ)

加速でも同様。最大で4基の駆動用モーターからの情報を処理し、連続的に制御することで、スタビリティを高めることができる。モーターの数を増やすことで、ノイエクラッセ・シリーズの走りへ大きな違いが生まれると、タルマイヤーは続ける。

「動的特性にも影響は大きいですね。フロントアクスルに1基、リアアクスルに2基のモーターがある場合、リア側の左右の回転を調整することで、ステアリングをアシストできます」

「モーターの回転速度を変化させることで、機敏な身のこなしも可能になります。従来のアクチュエーターや後輪操舵システムでは、新システムほど鋭くは走れません」

記事に関わった人々

  • 執筆

    ジェームス・アトウッド

    James Attwood

    役職:雑誌副編集長
    英国で毎週発行される印刷版の副編集長。自動車業界およびモータースポーツのジャーナリストとして20年以上の経験を持つ。2024年9月より現職に就き、業界の大物たちへのインタビューを定期的に行う一方、AUTOCARの特集記事や新セクションの指揮を執っている。特にモータースポーツに造詣が深く、クラブラリーからトップレベルの国際イベントまで、ありとあらゆるレースをカバーする。これまで運転した中で最高のクルマは、人生初の愛車でもあるプジョー206 1.4 GL。最近ではポルシェ・タイカンが印象に残った。
  • 翻訳

    中嶋けんじ

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

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