極細タイヤで驚きの速さ『ジャガー SS100』 不気味なほどに優秀『BMW 328』 1936年生まれの2台(2) 隔世の違い

公開 : 2026.03.21 17:50

変わらぬ若々しさを醸し出すBMW 328 技術力を誇示する直6エンジン レーシングカー級の加速を誇ったSS100 細いタイヤで驚く速さのコーナリング UK編集部が1936年生まれの2台へ迫る

1930年代のスポーツカーそのままな佇まい

ジャガー SS100には、新旧の技術が入り混じっていた。シャシーはボックスセクションで、サスペンションは前後ともリーフスプリングにビーム/リジッドアクスル。カーリング社製の機械式ブレーキと、ウォーム&ナット式のステアリングラックが組まれた。

ボディは、木材のアッシュ材をフレームに、アルミ製パネルを固定したもの。優雅に後方へ伸びる、トレードマークといえるフェンダーは、外注されていた。

ジャガー SS100 2 1/2リッター(1936~1940年/英国仕様)
ジャガー SS100 2 1/2リッター(1936~1940年/英国仕様)    マックス・エドレストン(Max Edleston)

ELK 4のナンバーで登録された今回の車両は、1937年式。シャシー番号は49002で、戦争を挟み、1960年にはブランズハッチ・サーキットでスプリントレースに参戦している。1度アメリカへ運ばれるが、1987年にグレートブリテン島へ戻ってきたという。

巨大なルーカス社製ヘッドライトに、ル・マン仕様の燃料タンクを備え、佇まいは1930年代のスポーツカーそのまま。丸くえぐられたドアに、リア積みのスペアタイヤ、低いフロントガラスなど、同時期のどんなモデルを持ってきても魅力度で劣らない。

運転体験へポジティブなモス社製4速MT

ステアリングホイールとシートの間に太ももを滑り込ませ、小さなバケットシートへ腰を下ろす。足元の空間は狭く、ペダルの間隔も近く、ソールが広い靴では2枚を同時に踏んでしまいそう。ツインカウルのダッシュボード下へ腕を伸ばし、シフトノブを探す。

前方には、ルーバーが切られたボンネットが伸び、ロマンティック。正面には、クリーム色に染まった盤面のスミス社製メーター。SSのロゴが誇らしげだ。

ジャガー SS100 2 1/2リッター(1936~1940年/英国仕様)
ジャガー SS100 2 1/2リッター(1936~1940年/英国仕様)    マックス・エドレストン(Max Edleston)

ステアリングのボスには、点火タイミングのレバーが備わるが、スタートボタンへ触れた途端に6気筒エンジンは目覚めた。クラッチは軽く踏め、滑らかにつながる。ゆっくりアクセルペダルを傾けると、モス社製のストレートカット・ギアが鳴き始める。

エンジンは粘り強く扱いやすい。30km/hを過ぎたら、3速を飛ばし4速へ入れて巡航できる。戦後のモス社製マニュアルは評判が振るわないが、SS100に載るユニットは運転体験の印象へポジティブ。スロットへすんなり入り、心地良い。

細いタイヤで驚く速さのコーナリング

刺激の濃さでは、BMW 328の方が遥かに上。向こうの方がパワーデリバリーは積極的で、コーナリングや乗り心地でも敵わない。もっとも、SS100が扱いにくいわけではなく、年式を考えると328が桁違いに優秀なだけに過ぎない。

タイヤは細いが、コーナリングの速さへ驚く。硬いリーフスプリングがロールを抑え、旋回時のバランスも素晴らしく、限界を事前に挙動で教えてくれる。他方、ヘアピンで大胆に扱うと負荷へ堪えきれない。荒れた路面では、振動を抑えきれない。

ジャガー SS100 2 1/2リッター(1936~1940年/英国仕様)
ジャガー SS100 2 1/2リッター(1936~1940年/英国仕様)    マックス・エドレストン(Max Edleston)

深追いしなければ、SS100の個性へ惚れ惚れする。温かい季節の夕暮れ時に、弾けるような排気音へ包まれながら、優しく灯るスピードメーターを眺めれば、幸せに違いない。究極的な充足感で328に及ばなくても、心を許せるドライバーズカーだ。

いくつかの弱点は、乗る時間が長くなるほど気にならなくなる。滑らかなアスファルトなら、速さを謳歌できる。ソリッドでキレの良い328に対し、世代の異なるスポーツカーに思えるかもしれないが。

記事に関わった人々

  • 執筆

    マーティン・バックリー

    Martin Buckley

    英国編集部ライター
  • 撮影

    マックス・エドレストン

    Max Edleston

    英国編集部フォトグラファー
  • 翻訳

    中嶋けんじ

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

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