【現役デザイナーの眼:マツダデザイン】造形の追求は世界トップクラス!『魂動デザイン』の肝は『面』にあり

公開 : 2025.03.13 19:05

次世代のマツダデザインとは

さて、冒頭の通り、モーターショーでのマツダ・ブースは長らく黒基調でしたが、2023年のJMS(ジャパン・モビリティ・ショー)では白色やグレー、木目を多く使うという変化がありました。また先日東京・青山にオープンしたブランド体感施設『マツダ・トランス青山』もJMSの時と同様、グレー、木目を中心とした、リラックス出来そうな空間でした。これはブランディングを少し方針転換したのかもしれません。

海外で発表された『マツダEZ-6』を見ても、従来の魂動デザインが継承されつつ、もっとおおらかで幅広いお客さんを想定しているようにも見えます。変わらずリフレクションで魅せているのですが、ショルダーは真っ直ぐ通っており、全体の流れとしてはややコンサバです。それでも大きく逆スラントとしたリア周りなど、通常だとバランスが崩れそうなデザインでも上手く造形しているのはさすがだと感心します。

2024年に中国で発表されたEVセダン『EZ-6』。真っ直ぐなショルダーラインは近年のマツダデザインの中ではコンサバティブだが、大きく傾いたリア周りがプロポーションに個性を与えている。
2024年に中国で発表されたEVセダン『EZ-6』。真っ直ぐなショルダーラインは近年のマツダデザインの中ではコンサバティブだが、大きく傾いたリア周りがプロポーションに個性を与えている。    マツダ

また、JMSで一番人気だったコンセプトカー『アイコニックSP』も、尖った印象はありません。しかしこれまでのマツダデザインには感じられなかったプラン(上面から見た図)での動きが大きく、グラマラスなデザインです。またフロントフェンダーから繋がっているAピラーでキャビン全体をボディと一体で見せるなど、造形の巧みさに驚きます。

このように次世代のマツダデザインは、魂動デザインを進化させつつ、緊張感だけでなくフレンドリーな印象も与えようとしているのではないでしょうか? 基本的にブランディングは変わらないと思いますが、その『表現の仕方』を変化させようとしていると感じます。

記事に関わった人々

  • 執筆

    渕野健太郎

    Kentaro Fuchino

    プロダクトデザイナー兼カーデザインジャーナリスト。福岡県出身。日本大学芸術学部卒業後、富士重工業株式会社(現、株式会社SUBARU)にカーデザイナーとして入社。約20年の間に様々な車をデザインする中で、車と社会との関わりをより意識するようになる。主観的になりがちなカーデザインを分かりやすく解説、時には問題定義、さらにはデザイン提案まで行うマルチプレイヤーを目指している。

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