21世紀の偉業を1台に凝縮 フェラーリ・デイトナSP3へ試乗 栄光の330 P4がモチーフ
公開 : 2025.04.30 19:05
殆どの基準で信じられないほどの速さ
デイトナSP3は、フェラーリ296 GTBが7台買えるお値段だが、それより速いとはいえないはず。パワーウエイトレシオはほぼ同じながら、他方はツインターボでハイブリッドの3.0L V6エンジンを積む。自然吸気エンジンのパワー特性は、それに及ばない。
もっとも、速さを比べるべきモデルではないだろう。それを理解するフェラーリは、イタリア・フィオラノ・サーキットでのラップタイムを公表していない。最速のタイムから、だいぶ離れていると予想する。

V8ツインターボのマクラーレン720 Sと比べても、炸裂するパワー感は控えめ。サウンドも、より聴き応えのあるフェラーリは存在する。それでも公道では、殆どの基準で信じられないほどの速さを披露することは事実だ。
V12エンジンが、最大トルクを発揮するのは7250rpmから。積極的に回す必要はあるが、その手前の6000rpmから点火時期が変化し、9500rpmまでの体感はエキサイティングそのもの。特有の鋭い美声を響かせながら、パワーが放たれる。
同時に、穏やかに走るのも苦手ではない。限定生産のエキゾチックなスーパーカーだが、気難しさは驚くほどない。
印象的な洗練性 無二の運転体験が待っている
シャシーも素晴らしい。乾燥したアスファルトでは、公道では必要ないほどのグリップ力を頼れる。ステアリングは、やや旧来的なダイレクト感があり、少し軽すぎるとしても。
乗り心地は充分快適といえ、特注される極太のピレリ・タイヤが跳ね上げる砂利の音を除いて、洗練性は印象的なほど高い。

濡れた滑りやすそうな路面で、マネッティーノ・ダイヤルを時計回りに回しきれば、線形的にスライドし始める。相応の勇気と向こう見ずさがあれば、だが。全幅がもう少し細身なら、存分に攻められたように思う。
試乗したのはコース幅の広いサーキットだったが、速度域が増しても、ボディがひと回り小さく感じられる気配はなかった。最大限に秘めた能力を発揮させることができれば、唯一無二の運転体験が待っているに違いない。
少なくとも、安全な環境で可能な限り速く運転する機会を得られて、筆者は幸せ者だ。296 GTBの方が速くて扱いやすく、費用対効果は高いかもしれない。しかし、そんな比較は野暮だろう。
全身で堪能するために誕生したフェラーリ
デイトナSP3は、五感を深く満たす。全身で堪能するために、誕生したといえる。
ひたすら美しく、速く走れ、美声を奏でる、希少なフェラーリ。実態は、330 P4と近いわけではない。それでも、幸運にも購入することができたビリオネアが、満足しないとは思えない。栄光のデイトナを名乗るのに、ふさわしいと思う。

◯:極めて特別なフェラーリ 840psを発揮する自然吸気のV12エンジン 素晴らしいスタイリング
△:車内が狭め 圧倒的に速いわけではない 完売状態
フェラーリ・デイトナSP3(欧州仕様)のスペック
英国価格:170万ポンド(約3億3150万円)
全長:4686mm
全幅:2050mm
全高:1142mm
最高速度:339km/h
0-100km/h加速:2.9秒
燃費:6.2km/L
CO2排出量:368g/km
乾燥重量:1485kg
パワートレイン:V型12気筒6496cc 自然吸気
使用燃料:ガソリン
最高出力:840ps/9250rpm
最大トルク:70.9kg-m/7250rpm
ギアボックス:7速デュアルクラッチ・オートマティック(後輪駆動)
















































































































































































