フェラーリ・ローマへ試乗 金管楽器のようにシンフォニック 待ち望まれたグランドツアラー

公開 : 2025.03.19 19:05

ポルトフィーノと多くの技術を共有するローマ 458 イタリア以来、最もハンサムな量産フェラーリ 金管楽器のような音響 スムーズな衝撃吸収性とシャープな操縦性 英編集部が評価

458 イタリア以来のハンサムな量産フェラーリ

ローマ誕生のいきさつを、フェラーリは明らかにしていない。誰かが、550 マラネロのようなクルマを作らないのかと、勇気ある質問を投げかけたのかもしれない。

1990年代後半の550 マラネロは、フロントエンジンのグランドツアラーとして、その時期では同社の最高傑作といって良かった。上品なスタイリングと、心を震わせる運転体験を備え、公道でも至って扱いやすかった。

フェラーリ・ローマ・クーペ(英国仕様)
フェラーリ・ローマ・クーペ(英国仕様)

その後、フロントにV型12気筒エンジンを搭載したモデルは続いたが、ラグジュアリーでワイルドに進化していった。同時に普段使いとの親和性は薄れ、圧倒的なスピードが重視されていった。サウンドとグリップ、スリリングさが追求された。

リトラクタブル・ハードトップを背負うポルトフィーノも生まれるが、モダン・フェラーリの中でのプレゼンスは、高いわけではなかった。しかし、その技術を巧みに活かしつつ、極めて高次元なFRモデルの創出が可能だと、同社は見事に証明してみせた。

このスタイリングは、アルファ・ロメオなども頼ってきた、チェントロ・スティーレ・デザイン部門での偉業の1つに数えられるだろう。筆者は458 イタリア以来、最もハンサムな量産フェラーリだと感じている。

プロポーションは崇高といえ、面処理はエレガント。それでいて、アグレッシブさも滲ませる。ディティールにも抜かりはない。カーボンファイバー製のフロントとサイドのスカートが、その上の金属製ボディと見事な対照関係を織りなしている。

ホワイトボディはポルトフィーノと多くを共有

実は、アルミニウム製シャシーとホワイトボディは、ポルトフィーノと多くを共有している。しかし、2670mmのホイールベースは同値でも、全高は低く全幅は広い。ドライブトレインの設計も異なり、車重は100kg近く軽い。

ローマは、70%が新しいと主張される。これは容積や質量ではなく、部品数での割合ではないかと推測する。

フェラーリ・ローマ・クーペ(英国仕様)
フェラーリ・ローマ・クーペ(英国仕様)

車内は大胆で豪奢なデザイン。メルセデスAMG GTベントレー・コンチネンタルGTなども検討するユーザーを、強く意識したことは間違いないだろう。

ダッシュボードは、フェラーリSF90 ストラダーレ由来の、メーター用とインフォテインメント用のモニターを統合した、ヒューマン・マシン・インターフェイスを採用。中央のタッチモニターは縦長で大きすぎず、目立たないのが好ましい。

ただし、インフォテインメント用ソフトウエアの完成度は今ひとつ。アップル・カープレイかアンドロイド・オートを起動すれば、気にならないが。

16.0インチのメーター用モニターは、操作系の見直しでシンプルなデザインになった、ステアリングホイール上のタッチセンサーで操作可能。フットレストの位置は手前すぎるものの、シートは座り心地に優れ、長距離も快適なはず。

ワイパーは小さなノブで。それ以外の車載機能はタッチセンサーで操作するが、余り勝手は良くない。

+2の後席側は、小柄なら大人も座れる広さ。荷室には、小さめのスーツケースを2・3個積める。スキーなど長尺の荷物は、後席の背もたれ中央を貫通させて載せられる。

記事に関わった人々

  • 執筆

    マット・ソーンダース

    Matt Saunders

    役職:ロードテスト編集者
    AUTOCARの主任レビュアー。クルマを厳密かつ客観的に計測し、評価し、その詳細データを収集するテストチームの責任者でもある。クルマを完全に理解してこそ、批判する権利を得られると考えている。これまで運転した中で最高のクルマは、アリエル・アトム4。聞かれるたびに答えは変わるが、今のところは一番楽しかった。
  • 翻訳

    中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

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