21世紀の偉業を1台に凝縮 フェラーリ・デイトナSP3へ試乗 栄光の330 P4がモチーフ

公開 : 2025.04.30 19:05

1967年の330 P4がモチーフの容姿を得たデイトナSP3 大声で叫びたいほど美しい 6.5L NA V12にカーボン製モノコック 殆どの基準で信じられないほどの速さ 印象的な洗練性 UK編集部が評価

1967年のデイトナで勝利した330 P4

俳優のマット・デイモン氏が主演した2019年の映画、「栄光のル・マン」が記憶にある読者は少なくないと思う。フォードのワークスチームとキャロル・シェルビー氏が大西洋を渡り、フェラーリをル・マン24時間レースで翻弄するストーリーだ。

「栄光のデイトナ」は、製作されないのだろうか。その翌年、1967年のデイトナ24時間レースでは、フェラーリがフォードへリベンジを果たしている。

フェラーリ・デイトナSP3(欧州仕様)
フェラーリ・デイトナSP3(欧州仕様)

大西洋を西に向かったフェラーリのワークスチームは、レーシングカーの330 P4を1台と、330 P3を改造した330 P4の2台を擁立。フォードは7.0Lエンジンを搭載したGT40 MkIIを6台用意し迎え撃つものの、完敗している。

この勝利は、フェラーリの伝説になった。クルマ好きの間にも強い記憶を植え付けた。その後に登場した公道用モデル、フェラーリ365 GTB/4が、デイトナと呼ばれるようになったきっかけといえる。

365 GTB/4を、フェラーリは正式にはデイトナと呼んではいない。しかし、今回試乗したイエローのスーパーカーは、デイトナSP3と名付けられている。

大声で叫びたいほど美しい 栄光のマシンがモチーフ

フェラーリは、イーコナと呼ばれる、少量生産モデル・プロジェクトを立ち上げた。812スーパーファストがベースのバルケッタ、モンツァSP1とSP2が、既にリリースされている。その3番目となるのが、デイトナSP3だ。

スタイリングは、先述の栄光のマシン、330 P4がモチーフであることは間違いない。美しくカーブを描くフェンダーラインやテールのスリットなどは、あからさまにそうだろう。フロントガラスとルーフが備わり、日常性も担保されている。

フェラーリ・デイトナSP3(欧州仕様)
フェラーリ・デイトナSP3(欧州仕様)

筆者は、330 P4が世界で最も美しいクルマだと考えてきた。だが、デイトナSP3も劣らず大声で叫びたいほど美しい。2013年のラ・フェラーリ以来となる、最高傑作ではないだろうか。驚くほどワイドだが。

確かに、イタリア・マラネロ生まれのクルマはどれも美しい。それでも、ローマや812 スーパーファストを、何時間も眺めてしまう人はそこまで多くないと思う。

これほど印象的で斬新的なスタイリングは、永遠に色褪せないはず。遠くから眺めているだけでも、深い喜びが湧いてくる。

6.5L NA V12にカーボン製モノコック

美しいだけではない。これまでの21世紀のフェラーリの偉業が、1台に凝縮されているといっても過言ではない。

シャシーは、ラ・フェラーリ譲りのカーボンファイバー製モノコック。ミドシップされるエンジンは、812 コンペティツィオーネ譲りの6.5L自然吸気V型12気筒。それらが、芸術品のようなボディで包み込まれている。

フェラーリ・デイトナSP3(欧州仕様)
フェラーリ・デイトナSP3(欧州仕様)

インテリアデザインは、シンプルで研ぎ澄まされている。しっかり、走りが意識されている。170万ポンド(約3億3150万円)という英国価格へ、見合うものではないかもしれないが。

ドアはディヘドラルで、乗降性が良いわけではない。筆者は何度も頭をドアやルーフにぶつけてしまった。シートは、ラ・フェラーリと同じくシャシーへ固定されている。レバーを引いて、ペダルボックスの位置を調整すれば、理想的な運転姿勢へ落ち着ける。

フロントノーズの下には、小さな収納がある。しかし、1泊2日用のバッグが入るほどではない。

記事に関わった人々

  • 執筆

    アンドリュー・フランケル

    Andrew Frankel

    英国編集部シニア・エディター
  • 翻訳

    中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

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