オールロードな「リアル」フェラーリ プロサングエへ試乗 ブランドDNAをSUVへ継承

公開 : 2025.04.18 19:05

6.5L V12に特徴的な四輪駆動システムを採用するプロサングエ 運転へ集中できる車内環境 2033kgを意に介さないパワー 突出の落ち着き 際立つ操縦性のバランス 英国編集部が評価

6.5L NA V12 駆動系はGTC4ルッソの進化版

フェラーリは、プロサングエがSUVではないと主張する。同社CEOは、マラネロからSUVが生まれることはないと断言していた。表現へ慎重な姿勢には、理解できる。

V12エンジンをフロントへ搭載し、存在感はスーパーカー級。四輪駆動だが、全高はさほど高くない。ウエストラインより下側が、力強く見えるよう造形されている。

フェラーリ・プロサングエ(英国仕様)
フェラーリ・プロサングエ(英国仕様)

それでも、ポルシェアストン マーティンランボルギーニのSUVと伍することは明らか。ただし、売上の半分をプロサングエが占めることはない。全体の生産数の20%以上を、割り当てる計画がないためだ。

先進的な技術は満載。例えばアクティブダンパーは、電気モーターとギアで制御される。従来のSUVでは叶えられなかった、精緻な操縦性と高度な安定性を実現したという。2028mmの全幅へ慣れれば、実用性も悪くないだろう。

同社初の4ドアで、主にアルミニウムを用いたモノコック構造は専用開発。フロントアクスルの後方へ載るのは、自然吸気6.5L V型12気筒エンジン。最高出力725ps、最大トルク72.8kg-mを発揮し、燃費は5.8km/Lがうたわれる。

駆動系はフェラーリGTC4ルッソの進化版で、リアアクスル側にツインクラッチの8速ATを配置。エンジンのクランクシャフト前方からもパワーは引き出され、2速ATとクラッチを介して、前輪も駆動する。

前後の重量配分は、49:51。重量物は、3018mmのホイールベース間に集中している。トランスミッションはリアシートの間に収まるため、定員は4名だ。

運転へ集中できる車内環境 荷室容量は473L

全高は1589mmと、SUVとしては高くない。ランボルギーニ・ウルスより30mm、アストン マーティンDBX707より90mmほど低い。リアドアはリアヒンジで開く。

ヒーター内臓のフロントシートへ座ると、居心地の良さに惹かれる。彫刻的なダッシュボードとセンターコンソールが、左右の席を適度に孤立させる。

フェラーリ・プロサングエ(英国仕様)
フェラーリ・プロサングエ(英国仕様)

運転姿勢は望ましく、前方視界に優れる。フェンダーの峰が視界にかかるが、ボンネットはほぼ見えない。リアウインドウは小さい。

メーター用モニターは、1部がスクロール表示可能。ステアリングホイール上のスイッチ類には、触れてわかる彫りが施され、覚えれば手元を見る必要がない。

ステアリングホイールの奥には、量産車最大級のシフトパドル。ステアリングコラムに、レバーはない。走りを重視するフェラーリは、ウインカーの操作よりパドルの弾きやすさを重視している。

「マネッティーノ」ダイヤルを回せば、アイス、ウェット、コンフォート、スポーツ、スタビリティオフからドライブモードを選べる。運転へ集中できる環境といえる。

ダッシュボード中央には、エアコン用のダイヤル。それをタッチしてスワイプすると、シートヒーターや送風位置なども調整できる。カーナビはなく、利用する場合はスマートフォンと連携させる必要がある。

荷室容量は473Lで、背もたれを倒すことも可能。テールゲートへ固定できるラックが、オプションで用意される。映画007へ出てきそうな、エキゾチックなスキー・エクスプレスになるはず。

記事に関わった人々

  • 執筆

    マット・プライヤー

    Matt Prior

    役職:編集委員
    新型車を世界で最初に試乗するジャーナリストの1人。AUTOCARの主要な特集記事のライターであり、YouTubeチャンネルのメインパーソナリティでもある。1997年よりクルマに関する執筆や講演活動を行っており、自動車専門メディアの編集者を経て2005年にAUTOCARに移籍。あらゆる時代のクルマやエンジニアリングに関心を持ち、レーシングライセンスと、故障したクラシックカーやバイクをいくつか所有している。これまで運転した中で最高のクルマは、2009年式のフォード・フィエスタ・ゼテックS。
  • 執筆

    リチャード・レーン

    Richard Lane

    役職:ロードテスト副編集長
    2017年よりAUTOCARでロードテストを担当。試乗するクルマは、少数生産のスポーツカーから大手メーカーの最新グローバル戦略車まで多岐にわたる。車両にテレメトリー機器を取り付け、各種性能値の測定も行う。フェラーリ296 GTBを運転してAUTOCARロードテストのラップタイムで最速記録を樹立したことが自慢。仕事以外では、8バルブのランチア・デルタ・インテグラーレ、初代フォード・フォーカスRS、初代ホンダ・インサイトなど、さまざまなクルマを所有してきた。これまで運転した中で最高のクルマは、ポルシェ911 R。扱いやすさと威圧感のなさに感服。
  • 翻訳

    中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

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