ランボルギーニ初のEV、980Vシステム採用へ 最高出力は2000psに達する可能性

公開 : 2025.03.14 07:45

ランボルギーニが2030年までに発売予定のEVは、VWグループが高性能車向けに開発した980Vの電気アーキテクチャーを採用します。最高出力は2000psに達するとのこと。

ポルシェ開発主導の次世代プラットフォームを採用

フォルクスワーゲン・グループのオリバー・ブルーメ最高経営責任者(CEO)によると、ランボルギーニ初のEVは2030年までに発売予定で、その最高出力は2000psに達する可能性があるという。

ランボルギーニは現在、ブランド初の量産EVの開発に取り組んでおり、2023年に公開した2+2のコンセプトカー『ランザドール』をベースとして発展させる見込みだ。同車にはフォルクスワーゲン・グループの高性能車専用プラットフォームが採用される予定である。

4人乗りの『ランザドール』コンセプトは、2030年までに市販車へと進化する。
4人乗りの『ランザドール』コンセプトは、2030年までに市販車へと進化する。

3月11日に開催されたグループの年次メディアカンファレンスで、記者からランボルギーニのEVについて尋ねられたブルーメ氏は、「フォルクスワーゲン・グループが持つ、ブランド間のシナジー効果を活かした共同エレクトリック・キット」から恩恵を受けるだろうと述べた。

さらに同氏は、「ポルシェが主導して開発中のアウディベントレー、ランボルギーニ、ポルシェ向けのプラットフォームを使用し、最高出力2000psと980Vを実現します。これはランボルギーニにとって非常に特殊な仕様です」と付け加えた。

ランボルギーニを率いるステファン・ヴィンケルマンCEOは以前、同ブランド初のEVは「少なくとも1メガワット(1360ps)」を発揮すると示唆し、そうしたハイパワーが高性能電動スポーツカーにおける「柱の1つ」になると述べていた。

グループにとって980Vの電気アーキテクチャーの採用は、大きな一歩となる。現在、ほとんどのEVは400Vアーキテクチャーを使用しているが、充電の高速化、高出力化、高効率化を狙って800Vシステムを採用するモデルも増えている。ニオET9などの一部の中国製EVは、すでに900Vを採用している。

ブルーメ氏は、EVはランボルギーニの本拠地であるイタリアのサンタアガタで組み立てられることを認めたが、車体やバッテリーがどこで製造されるかについてはコメントを避けた。

同氏は「典型的なランボルギーニであり、非常にエモーショナルなものになることをお約束します」とした。

電動化戦略に変更はなし

ランボルギーニのヴィンケルマンCEOは最近、他社のようにEVの発売を遅らせるつもりはないとしつつ、3車種の新型ハイブリッドモデルを可能な限り長く販売していく方針を示した。

昨年末、テメラリオの発表会でAUTOCARのインタビューに応じたヴィンケルマン氏は、同社の電動化戦略は「正しいもの」だと自信を見せていた。EVの発売に関しては、「重要なのは革新ではなく、適切なタイミングで投入すること」だとした。

ランボルギーニの現行3車種はすべてハイブリッドとなっている。(写真はテメラリオ)
ランボルギーニの現行3車種はすべてハイブリッドとなっている。(写真はテメラリオ)    ランボルギーニ

アストン マーティンやベントレーなど、複数の高級車メーカーは需要の鈍化を理由に新型EVの発売を延期している。ロータスは完全EV化計画を撤回し、レンジエクステンダー・ハイブリッドの新シリーズを発売する予定である。また、ポルシェは現行のエンジン車の販売期間延長を検討している。

ヴィンケルマン氏によると、EVは現行車の代替ではなく、全く新しいモデルラインであるため、販売台数に影響を及ぼすリスクは少ないという。

「EVの導入を早めるか遅らせるかを判断するには十分な時間があります。現時点では、何も遅らせるつもりはありません。2030年までに最初のEVを発売したい。これは追加のモデル、つまり4番目のモデルとなります」

「新しいモデルであり、新しいボディスタイルを持つ、新しいタイプのクルマです。ランボルギーニに新しい顧客を惹きつけることにもなるでしょう」

そのため、2030年までにEVを発売するという計画に変更はない。

しかし、ヴィンケルマン氏は、EVの普及曲線が「予想ほど急ではない」ことを認めている。これはスーパースポーツカーのセグメントでは「なおさら」当てはまる事象であり、「できる限り長くハイブリッドを販売する戦略は正しい」と述べた。

ランボルギーニの現行3車種はすべてハイブリッド化されている。

また、将来的に合成燃料がクリーンな動力源として実用化されたとしても、完全電動化の方針を覆すことはないとヴィンケルマン氏は言う。

「バッテリー技術が当社のクルマからなくなることはないでしょう。バッテリー技術は性能を妨げるものではなく、性能を向上させるものだからです。そして、バッテリー技術は進化します。当社がハイブリッド車にとどまっても、その性能はさらに向上していくでしょう」

電動化による利点は、現行車の売れ行きを見ても明らかだ。V12ベースのPHEVであるレヴエルトは「2026年いっぱい」まで生産枠が完売しており、またPHEVのウルスSEも2025年末まで予約が埋まっている。

テメラリオに搭載される4.0L V8エンジンは、先代のウラカンより2気筒少ないものの、ライバル車に対しては優位性がある。フェラーリ296、マクラーレンアルトゥーラ、マセラティMC20などはV6エンジンを搭載している。ヴィンケルマン氏は、エンジン排気量の優位性と回転数、サウンドがテメラリオの大きなセールスポイントになると示唆した。

「ランボルギーニを購入するということは、多くの場合、子供の頃からの夢を叶えることであり、非常に感情的な決断です。わたし達は常に顧客の要望に応え続け、一方で持続可能なビジネスケースを維持する必要があります」

「1年単位で物事を考えるわけにはいきません。主に10年以上継続しなければなりません。したがって、現実的な限界と、顧客の要望をうまくまとめることが非常に重要なのです」

記事に関わった人々

  • 執筆

    ジェームス・アトウッド

    James Attwood

    役職:雑誌副編集長
    英国で毎週発行される印刷版の副編集長。自動車業界およびモータースポーツのジャーナリストとして20年以上の経験を持つ。2024年9月より現職に就き、業界の大物たちへのインタビューを定期的に行う一方、AUTOCARの特集記事や新セクションの指揮を執っている。特にモータースポーツに造詣が深く、クラブラリーからトップレベルの国際イベントまで、ありとあらゆるレースをカバーする。これまで運転した中で最高のクルマは、人生初の愛車でもあるプジョー206 1.4 GL。最近ではポルシェ・タイカンが印象に残った。
  • 執筆

    フェリックス・ペイジ

    Felix Page

    役職:副編集長
    AUTOCARの若手の副編集長で、大学卒業後、2018年にAUTOCARの一員となる。ウェブサイトの見出し作成や自動車メーカー経営陣へのインタビュー、新型車の試乗などと同様に、印刷所への入稿に頭を悩ませている。これまで運転した中で最高のクルマは、良心的な価格設定のダチア・ジョガー。ただ、今後の人生で1台しか乗れないとしたら、BMW M3ツーリングを選ぶ。
  • 翻訳

    林汰久也

    Takuya Hayashi

    1992年生まれ。幼少期から乗り物好き。不動産営業や記事制作代行といった職を経て、フリーランスとして記事を書くことに。2台のバイクとちょっとした模型、おもちゃ、ぬいぐるみに囲まれて生活している。出掛けるときに本は手放せず、毎日ゲームをしないと寝付きが悪い。イチゴ、トマト、イクラなど赤色の食べ物が大好物。仕事では「誰も傷つけない」「同年代のクルマ好きを増やす」をモットーにしている。

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