季節不問の頼もしいブランド・ベスト ボルボV90 T8(2) 動力性能はスポーツカーと遜色なし

公開 : 2025.05.15 19:06

ドイツ製ワゴンの有力な対抗馬といえる、ボルボのV90 8年が経過しても美しいスタイリング 高級感に不足ない広々車内 スポーツカーと遜色ないプラグインHVの動力性能 UK編集部が試乗

スポーツカーと遜色ないプラグインHVの動力性能

V90は、ボルボとしてはかなりパワフル。安価な方のプラグイン・ハイブリッドのT6でも、最高出力は350psあり、0-100km/h加速を5.5秒で処理する。T8では455psへ上昇し、4.8秒へ短縮される。スポーツカーと遜色ない鋭さといっていい。

ただし、その数字へ期待するほど速くは感じにくい。車重が2011kgと軽くなく、8速ATの反応が穏やかなことが影響している様子。最高速度は180km/hでリミッターがかかる。ドイツを頻繁に走るなら別だが、賢明な判断だろう。

ボルボV90 T8 AWDウルトラ(英国仕様)
ボルボV90 T8 AWDウルトラ(英国仕様)

ドライブモードによって、パワートレインのレスポンスは変化する。ハイブリッド、ピュア、パワー、コンスタントAWDの4種類があり、ステアリングやブレーキ、ダンパーも、同調して調整される。デフォルトは、ハイブリッド・モードだ。

穏やかな乗り心地と自然な操縦性

パワー・モードを選ぶと、燃費と引き換えに、パワートレインの反応は素早くなる。アクセルペダルを踏み込むと、モーターが積極的にトルクを加算。エンジンの回転数が上昇するまでを、巧みに補完してくれる。

ピュアは、可能な限り駆動用モーターが走りを引き受けるモード。充分に力強く、小回りの良さと相まって、市街地をキビキビと駆け回れる。充電や出力が不足すると、エンジンが加勢する。

ボルボV90 T8 AWDウルトラ(英国仕様)
ボルボV90 T8 AWDウルトラ(英国仕様)

どのモードでも、乗り心地は穏やか。洗練度が高い、自然な操縦性を叶えている。基本的には、リラックスした気持ちで走らせるタイプで、連続するカーブを楽しめるわけではない。攻め込むほど、コンフォート・ゾーンから外れる印象がある。

それでも、グリップ力とシャシーのバランスは優秀。ステアリングは正確で漸進的に反応し、力強くワインディングを処理していける。しなやかな乗り心地でありながら、抑制されたボディロールも好ましい。

季節を問わず頼もしいステーションワゴン

サスペンションは、凹凸の目立つ市街地の路面でも快適性を維持。高速道路では、大きくうねるような区間でも、フラットにボディは保たれる。車内の遮音性も素晴らしい。風切り音や転がり音は、遠くから響いてくる程度。エンジン音も、殆ど目立たない。

速度域を問わず、走りの能力はメルセデス・ベンツEクラス並み。季節を問わず、頼もしいステーションワゴンだといえる。買い物から長距離旅行まで、お手の物だ。

ボルボV90 T8 AWDウルトラ(英国仕様)
ボルボV90 T8 AWDウルトラ(英国仕様)

運転支援システムは、アダプティブ・クルーズコントロールや車線維持支援、歩行者にも対応した衝突被害軽減ブレーキなどが標準。オプションで、後方の衝突被害軽減ブレーキなど機能を拡充できるが、システムの完成度は高水準といえる。

例えば車線維持支援は、大きく車線をはみ出しそうな場面に限り、ステアリングホイールへ自然に介入。滑らかな運転を、アシストしてくれていた。

記事に関わった人々

  • 執筆

    ジョナサン・ブライス

    Jonathan Bryce

    役職:ソーシャルメディア・エグゼクティブ
    AUTOCARのSNS担当として、X、YouTubeショート、インスタグラムなどの運営を任されている。以前は新聞紙や雑誌に寄稿し、クルマへの熱い思いを書き綴っていた。現在も新車レビューの執筆を行っている。得意分野はEVや中古車のほか、『E』で始まるBMWなど。これまで運転した中で最高のクルマは、フォルクスワーゲンUp! GTI。 『鼻ぺちゃ』で間抜けなクルマだったが、家族の愛犬もそうだった。愛さずにはいられないだろう。
  • 翻訳

    中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

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