距離を重ねるほど愛着湧きそう 誕生 ボルボES90(1) 競合凌ぐ有能サルーンのハード概説

公開 : 2025.10.23 19:05

ボルボ最新の大型電動サルーン、ES90 333psの後輪駆動から680psの四輪駆動まで 車内は特別なラウンジのよう サイレント&シームレスな走り 急速充電は350kW UK編集部が試乗

距離を重ねるほど愛着が湧きそう

現在のボルボは、厳しい財政状況にあるという。果たして最新の電動サルーン、ES90は効果的に働くだろうか。従来のボルボのように、印象は控えめ。それでいて、距離を重ねるほど愛着が湧きそうな仕上がりだと、筆者は感じた。

乗り心地や操縦性のバランスが、好ましい。上質なインテリアも。スタイリングは、シンプルでエレガント。腰高感のあるシルエットは、特有の存在感を生む。タクシーの行灯のような、レーザーセンサー「ライダー」の突起が目立つとはいえ。

ボルボES90 ウルトラ・シングルモーター・エクステンデッドレンジ(欧州仕様)
ボルボES90 ウルトラ・シングルモーター・エクステンデッドレンジ(欧州仕様)

他方、新しい経営体制のもとで、ブランドイメージは揺らいでいる。更にこの上級サルーンは、北米で販売されることが当面ない。ES90は中国の内陸部、成都に構えた工場で生産される。トランプ政権下での追加関税によって、北米での販売が難しいためだ。

333psの後輪駆動から680psの四輪駆動まで

ES90が基礎骨格とするのは、同社の大型電動SUV、EX90も採用するSPA2プラットフォーム。電動パワートレインは、電圧800Vで制御される。今のところ400VのEX90も、2026年のアップデートで昇圧されるという。

ベーシックな構成は、333psの駆動用モーターが1基と、88.0kWhのバッテリーの組み合わせで後輪駆動。航続距離は645kmが主張され、急速充電は350kWまで対応する。

ボルボES90 ウルトラ・シングルモーター・エクステンデッドレンジ(欧州仕様)
ボルボES90 ウルトラ・シングルモーター・エクステンデッドレンジ(欧州仕様)

ツインモーターの四輪駆動は、449psか680psの2択。バッテリーは102kWhへ増量され、1度の充電で700km走れると主張される。シングルモーター版で、この大容量バッテリーは選択できない。

サスペンションは、ベースグレードでは通常のコイルとダンパーが組まれる。ツインチャンバーのエアスプリングとアダプティブダンパーのセットは、トップグレードのウルトラで標準。ホイールは、20インチから22インチまで選択できる。

穏やかな雰囲気の車内 モニターへ頼りすぎ?

穏やかな雰囲気のインテリアは、強みの1つ。特に明るめのカラーコーディネートでは、上質さが際立つように思う。ガラスルーフの調光は、EX90にはない機能だろう。

上品な造形のダッシュボードへ、縦に長い14.5インチのタッチモニターが後付けされたように固定されているのは、少し残念かもしれない。それでも、アンドロイド・ベースのインフォテインメント・システムの表示は鮮明で、操作性も素晴らしい。

ボルボES90 ウルトラ・シングルモーター・エクステンデッドレンジ(欧州仕様)
ボルボES90 ウルトラ・シングルモーター・エクステンデッドレンジ(欧州仕様)

ただし、多くの機能をモニターへ割り振りすぎているように思う。ドアミラーの角度などは、手早く押せるハードスイッチで調整できた方が望ましいし、安全だろう。ライトのオン/オフも同様だ。

例えば狭い駐車枠へバックで止める際、白線を見るためにドアミラーの角度を下げたい場面があるはず。ところが、シフトセレクターがRに入っていると、タッチモニターはバックカメラの画面へ固定されてしまう。Dへ戻さないと、角度調整できない。

記事に関わった人々

  • 執筆

    リチャード・レーン

    Richard Lane

    役職:ロードテスト副編集長
    2017年よりAUTOCARでロードテストを担当。試乗するクルマは、少数生産のスポーツカーから大手メーカーの最新グローバル戦略車まで多岐にわたる。車両にテレメトリー機器を取り付け、各種性能値の測定も行う。フェラーリ296 GTBを運転してAUTOCARロードテストのラップタイムで最速記録を樹立したことが自慢。仕事以外では、8バルブのランチア・デルタ・インテグラーレ、初代フォード・フォーカスRS、初代ホンダ・インサイトなど、さまざまなクルマを所有してきた。これまで運転した中で最高のクルマは、ポルシェ911 R。扱いやすさと威圧感のなさに感服。
  • 翻訳

    中嶋けんじ

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

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