ヘルメット必須 メルセデスAMG SL ピュアスピード(2) 充足感と興奮の生涯忘れない運転体験

公開 : 2025.07.01 19:10

AMG史上最も劇場的な、SL ピュアスピード登場 窓ガラスと後席省略 底面にカーボン製アクティブエアロ 言葉を失うレスポンス ヘルメット必須でも類まれな充足感と興奮 UK編集部が試乗

ヘルメットが必須 言葉を失うレスポンス

背の高いフロントガラスがないから、メルセデスAMG SL ピュアスピードへ乗る時は、ヘルメットが必須。安全に、思う存分楽しむために。市街地の速度域でも、顔に当たる風量は小さくない。そのかわり、走るほどに満たされていく。

160km/hを超えると空気が暴力的にぶつかり、気流でヘルメットが左右へ揺さぶられる。見た目へ相応しいスピードで疾走するには、相応の努力が求められる。走行中は風切り音が大きく、ハンドビルド・エンジンが放つサウンドは打ち消される。

メルセデスAMG SL ピュアスピード(欧州仕様)
メルセデスAMG SL ピュアスピード(欧州仕様)

ボンネットの内側へ載るのは、通常のAMG SL 63と同じ4.0L V8ツインターボで、585psと81.4kg-mを繰り出す。トランスミッションは、9速マルチクラッチ・オートマティック。リアアクスル主体の、可変式四輪駆動システムが組まれる。

アクセルレスポンスに言葉を失う。トルクは巨大で、パドルを引くと瞬間的で滑らかに変速は終わる。試乗イベントとなったのは、イタリアの公道レース「ミッレ・ミリア」。出場車をはやし立てる観衆が、瞬く間に後方へ流れていく。

風切り音で聞こえない排気音 1970kgでも機敏

最も積極的なドライブモードでも、風切り音とヘルメットで、排気音は耳に届かない。これは少し残念だ。タッチモニターは備わるが、カーナビの案内音声も聞こえない。助手席の人と会話できるよう、マイクとイヤフォンは用意されているけれど。

長めのフロントノーズと、狭くない全幅を持つSL ピュアスピードだが、扱いにくくはない。ステアリングの反応は精緻。後輪操舵システムが実装され、ヘアピンカーブを颯爽と旋回していける。

メルセデスAMG SL ピュアスピード(欧州仕様)
メルセデスAMG SL ピュアスピード(欧州仕様)

傷んだイタリアの旧道を飛ばしても、挙動は落ち着いている。突然の路面変化でも、安定性は失わない。トラクションとグリップも秀抜で、タイヤはアスファルトを掴み続ける。軽量化されていても、車重は1970kg。軽くはないが、非常に機敏だ。

想像できないほど優しい乗り心地にも

ドライブモードは、コンフォートからレースまで複数あるが、アクセルレスポンスやダンパーレートだけでなく、ステアリングホイールの重さやトランスミッションの変速速度、排気系まで制御。クルマの個性自体を変化させる。

ボディ底面のアクティブエアロがオンになると、操舵時の反応と安定性が更に高まる。サスペンションは、前がダブルウィッシュボーンで後ろがマルチリンク。アダプティブAMGライドコントロールが、幅広い動的特性を実現している。

メルセデスAMG SL ピュアスピード(欧州仕様)
メルセデスAMG SL ピュアスピード(欧州仕様)

コンフォート・モード時は、レーシングカーのような見た目から想像できないほど、優しい乗り心地を得られる。敷設から時間の経過した路面へ息を合わせるように、入力をなだめてくれる。あるいは、別のモードで息が詰まるほど硬くもできる。

ステアリングホイールのノブで、電子的なセーフティーネットの強度を選べる。ドライバーが望めば、シャシーは応えてくれる。打ちのめされる荒々しさではないものの、SL ピュアスピードとの距離は、丁寧に縮めた方が良いだろう。

記事に関わった人々

  • 執筆

    グレッグ・ケーブル

    Greg Kable

    英国編集部ライター
  • 翻訳

    中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

メルセデスAMG SL ピュアスピードの前後関係

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