B~Cセグメント級ミドシップ4WDスポーツという夢 『GRヤリスMコンセプト』を渡辺敏史が取材(後編)

公開 : 2026.06.06 12:05

乗りやすさは想像を大きく上回るもの

第三週回路の同乗走行を終えると、施設内にあるダートコースでステアリングを握るという嬉しいサプライズが待っていた。用意されたのは前期型のGRヤリスと2023年に初めて製作されたという試作1号車だ。

搭載エンジンはG20系ではなく現行のG16系で、エンジン幅が小さいこともあってリアサスもマルチリンクを継承しているが、熱との戦いは当初からシビアだったとみえて、随所にチャンネルが設けられている。車体が横を向いている時間が長いダート走行であれば尚のこと冷却は厳しいだろう。

施設内にあるダートコースで試作1号車のステアリングを握ることができた。
施設内にあるダートコースで試作1号車のステアリングを握ることができた。    トヨタ自動車

ダートで乗るMコンセプトの1号車、その乗りやすさは想像を大きく上回るものだった。最初はそろりと挙動を確認するように円旋回を試みたものの、ステアリングもアクセルも唐突な応答は極力丸め取られているようで肌馴染みがいい。

そこで調子に乗ってちょっと膨らみそうな挙動を示せば、アクセルを抜くだけで間髪入れずスッと車体をインに寄せてくれる優しさもある。

ミドシップ4WDのラリー車両といえば脊椎反射で狂気のグループB車両を思い出すのはオッさんの悪癖かもしれないが、なるほどGRの作るそれはさすがに針穴に糸を通すような緊張感にはさいなまれない。

但し、アクセルのちょっとした踏み加減によっては一気にオーバーステア化するような挙動は幾度か味わった。佐々木選手はターマックの第三週回路で路肩いっぱいを使ってこの癖をなだめながら、左へ右へスパスパとMコンセプトを曲げていたのだろう。

GRヤリスとは一線を画するスジの良さ

こと旋回能力について、MコンセプトがGRヤリスとは一線を画するスジの良さを備えていることは充分認識できた。

このパッケージがWRCで反映できるか否かは不明ながら、優れたラリーカーは最上のスポーツカーなり得るという定説は歴史が証明してもいる。その名がセのつくクルマになるか否かはさておき、少なくとも開発で得られた知見は間違いなく次なる市販車への糧となるだろう。

B〜Cセグメント級ミドシップ4WDスポーツという夢は実現するか?
B〜Cセグメント級ミドシップ4WDスポーツという夢は実現するか?    トヨタ自動車

齋藤さん曰く、そんな目処はまったく立たないし、熱だけでなく課題は山ほどありますから……と、そんな気配はお首にも出さない。が、現状の欧米のメーカーでは到底望めないB〜Cセグメント級ミドシップ4WDスポーツという夢を、Mコンセプトに重ねることは我々クルマ好きの自由だ。そんな視点でS耐を追ってみるのもまた楽しいと思う。

記事に関わった人々

  • 執筆

    渡辺敏史

    Toshifumi Watanabe

    1967年生まれ。企画室ネコにて二輪・四輪誌の編集に携わった後、自動車ライターとしてフリーに。車歴の90%以上は中古車で、今までに購入した新車はJA11型スズキ・ジムニー(フルメタルドア)、NHW10型トヨタ・プリウス(人生唯一のミズテン買い)、FD3S型マツダRX-7の3台。現在はそのRX−7と中古の996型ポルシェ911を愛用中。
  • 編集

    平井大介

    Daisuke Hirai

    1973年生まれ。1997年にネコ・パブリッシングに新卒で入社し、カー・マガジン、ROSSO、SCUDERIA、ティーポなど、自動車趣味人のための雑誌、ムック編集を長年担当。ROSSOでは約3年、SCUDERIAは約13年編集長を務める。2024年8月1日より移籍し、AUTOCAR JAPANの編集長に就任。左ハンドル+マニュアルのイタリア車しか買ったことのない、偏ったクルマ趣味の持ち主。

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