70年以上の月日を重ねた名車が約1900kmを走る メルセデス・ベンツ300SLでミッレミリア2026へ(2) 速度に関係なく素晴らしい

公開 : 2026.08.01 17:50

特に惚れ惚れする4500rpm前後の響き

エグゾーストはリアから突き出し、W194型より車内は静か。6気筒ユニットらしい、洗練された美声を奏でる。4500rpm前後の響きは、特に惚れ惚れする。乗り心地は上質ながら操縦性はタイトで、ボディはソリッドで、一体感が強い。

仮に筆者が1台所有していたら、ミッレミリアへ挑むか迷うはずだが、メルセデス・ベンツは24時間体制でバックアップしてくれる。W198型は、時価200万ポンド(約4億2000万円)。1週間のアシストに約2万ポンド(約420万円)は、法外ではないだろう。

メルセデス・ベンツ300SL(W198型/1954〜1963年)
メルセデス・ベンツ300SL(W198型/1954〜1963年)

2026年のミッレミリアは、実際は約1200マイル、約1900kmという長丁場だった。それでも、70年以上の月日を重ねた300SLは、年齢を重ねたドライバーをいたわりながら完走を叶えてくれた。こんなクラシックカーは、他にない。

番外編:300SLRの栄光と悲劇

メルセデス・ベンツは、W194型300SLで偉業を残した。だが、それを凌駕したのが1955年のW196S型、300SLRだろう。設計は当時のF1マシンへ近く、シャシーはシングルシーターからツーシーターへ改良され、エンジンは直列8気筒だった。

このロードスターのステアリングホイールは、英国人ドライバーのスターリング・モス氏も握っている。彼は1955年のミッレミリアを平均159km/hで走り、10時間7分48秒でゴール。2位へ入賞した300SLRへ、32分もの大差で優勝している。

2026年のミッレミリアの様子
2026年のミッレミリアの様子

その後、300SLRはル・マン24時間レースへ。しかし、ピット付近のストレートで追突したピエール・ルヴェー氏が駆る300SLRは、観客席へ弾き飛ばされ、83名もの命が失われてしまう。メルセデス・ベンツは、これを機にレースからの撤退を決めた。

結果的に、2台作られていた300SLR クーペは、日の目を見ることがなかった。だが2022年に1台がオークションへ出品されると、1億1500万ポンドという超高額で落札。収益は非営利団体へ寄付されつつ、世界で最も高価なクルマとなった。

記事に関わった人々

  • マット・プライヤー

    Matt Prior

    役職:編集委員
    新型車を世界で最初に試乗するジャーナリストの1人。AUTOCARの主要な特集記事のライターであり、YouTubeチャンネルのメインパーソナリティでもある。1997年よりクルマに関する執筆や講演活動を行っており、自動車専門メディアの編集者を経て2005年にAUTOCARに移籍。あらゆる時代のクルマやエンジニアリングに関心を持ち、レーシングライセンスと、故障したクラシックカーやバイクをいくつか所有している。これまで運転した中で最高のクルマは、2009年式のフォード・フィエスタ・ゼテックS。
  • 中嶋けんじ

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

メルセデス・ベンツ300SLでミッレミリア2026への前後関係

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