日産『キックス』欧州市場へ初投入 人気クロスオーバー車、英国サンダーランド工場で生産決定 障壁は政府のEV規制

公開 : 2026.09.18 17:05

日産が英国サンダーランド工場で『キックス』を生産するという計画を発表しました。キックスが欧州市場に投入されるのは今回が初めて。しかし、英国では政府のEV販売目標が厳しく、欧州日産の幹部は規制緩和を求めています。

ジュークの実質的な後継車

日産は、人気クロスオーバー車『キックス』を欧州市場に投入する。1億7000万ポンド(約355億円)を投じ、サンダーランド工場で生産する計画だ。

キックスは2016年にブラジル市場を主眼として発売され、2024年に発売された2代目モデルは現在、ブラジル、日本、メキシコで生産されている。これまで欧州では販売されたことがないが、日産が事業展開する多くの市場で販売されている。

日産キックス
日産キックス    日産

英国サンダーランド工場では現在、『キャシュカイ』、『ジューク』、そして新型『リーフ』が生産されている。次世代のEV版ジュークも生産する予定だが、EV版キャシュカイの計画は中止されたため、キックスの導入は同工場にとって大きな追い風となるだろう。

キックスは、日産のSUVラインナップにおいてキャシュカイの下位に位置づけられ、発売から7年目を迎える同サイズのガソリン版ジュークの後継モデルとなる。グローバル仕様の全長は4365mmで、CMF-Bプラットフォームを共有するジュークよりわずかに長い。

欧州日産の幹部は規制緩和を求める

しかし、英国政府がZEV(ゼロ・エミッション車)規制を緩和しない限り、キックスの欧州生産を英国で行う計画は実現しない可能性もある。

「この計画の大部分は、ZEV規制の改正次第です」と、日産欧州部門責任者のマッシミリアーノ・メッシーナ氏は述べた。

日産キックス
日産キックス    日産

サンダーランドでのキックス生産の発表は、日産の同工場への確固たるコミットメントを示している。しかし、キックスはEVではなくハイブリッド車であるため、2030年以降は新車販売の80%をEVにしなければならないという規制により、英国での販売が制限される可能性がある。

メッシーナ氏は、日産は8月に発表された法改正の見直しの一環として、英国政府に対しEV販売比率を50%以下に引き下げるよう求めていると述べた。

「英国のメーカーとして競争力を維持できる水準まで、この義務が改正されることを期待しています。50%は財務的に理にかなった数値です。40%であればさらに望ましい」とメッシーナ氏は語っている。

英国政府は、EV販売比率の目標を「ビジネスに配慮し、現実的なもの」とすることを目指すと表明している。

背景には中国車との激しい競争も

英国ではガソリンや軽油価格の高騰、および低価格EVの発売により、多くの消費者がエンジン車から乗り換えた結果、ここ数か月でEVの販売台数が急増している。8月には販売が28%増加し、EVの市場シェアは30%に達した。

しかし、自動車メーカー各社にとってEVの生産コストは依然として高く、エンジン車と同等の利益率となる水準まで引き下げることができていない。

日産キックス
日産キックス    日産

メッシーナ氏は、来週までには規制の変更内容についてより明確な見通しを得られるだろうと予測し、政府に対し迅速な対応を求めた。

「早ければ早いほどいい。サプライヤーと協議し、サンダーランドの生産ラインを新型車の導入に備えて準備する時間を確保できます」と同氏は語った。

日産は他の自動車メーカーと同様、コストパフォーマンスに優れたモデルで攻勢をかける中国メーカーと激しい競争を繰り広げている。

メッシーナ氏は、英国で事業を展開する自動車メーカーが競争力を維持するには支援が必要だと述べた。その理由として、「競合他社の中には、必ずしも同じ給与を支払わず、同じ社会保険料を負担せず、同じ税金を納めていない企業もあるからです」と指摘した。

中国企業は、英国において他の欧州諸国よりも多くのEVを販売している。これは、英国が中国製EVに対して、欧州連合(EU)が適用しているような「相殺関税」を課していないためだ。

「英国をEUの一員とする以上、英国に『トロイの木馬』を潜ませるわけにはいかないでしょう」とメッシーナ氏は述べた。

記事に関わった人々

  • 執筆

    ニック・ギブス

    Nick Gibbs

    英国編集部ビジネス担当記者
  • 翻訳

    林汰久也

    Takuya Hayashi

    1992年生まれ。幼少期から乗り物好き。不動産営業や記事制作代行といった職を経て、フリーランスとして記事を書くことに。2台のバイクとちょっとした模型、おもちゃ、ぬいぐるみに囲まれて生活している。出掛けるときに本は手放せず、毎日ゲームをしないと寝付きが悪い。イチゴ、トマト、イクラなど赤色の食べ物が大好物。仕事では「誰も傷つけない」「同年代のクルマ好きを増やす」をモットーにしている。

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