【休日クラシック・ポルシェ・アーカイブ #35】1984年ポルシェ911SC RS 3.0(後編)「5台がロスマンズ、15台がプライベーターに」
公開 : 2026.08.30 09:11
世界的な人気モデルとして支持され、サーキットでも数えきれぬ栄光の記録を刻んできたポルシェ。日曜日の午前9時11分に公開する、そんなポルシェの足跡を膨大なアーカイブと共に振り返る連載です。#35は『1984年ポルシェ911SC RS 3.0』の後編です。
軽さを選び3リッター・ユニットを採用
ポルシェ911SC RS 3.0(社内型式954)が誕生した時点で、ポルシェは3.2リッターエンジンを積む911カレラ3.2を生産していた。FIAのグループB車両規定では、最低重量が3000cc以下は960kgであるのに対し、次のクラスとなる4000cc以下は1100kgとなるため、軽さを優先して3リッター以下に収まる911SCで使われていた2994ccユニットを使うことにする。
ボア×ストロークと排気量に変わりはないが、935用シリンダーヘッド、ハイリフトの新型カムシャフト、ハイバタフライ式吸気システム、新型鍛造ピストン、ヒートエクスチェンジャーを排除したRSRスタイルのエグゾーストシステムが組み込まれた。

燃料供給は911SCのボッシュ製Kジェトロニックに代わり、クーゲルフィッシャー製の6ピストン式機械式燃料噴射ポンプを採用。圧縮比は9.8:1から10.3:1へと引き上げられた。
公道仕様のSC RS3.0は、最高出力255hp/7000rpmを発揮する。競技仕様のSC RSは当初270hpだったが、最終的に約290hpまで向上していた。
エンジンと同様に、SC RS 3.0のトランスミッションも専用設計のものを採用する。これはショートシフト仕様の5速トランスミッションで、ギア比の選択が可能だったほか、3.2カレラ用オイルクーラーや強化オイルポンプも組み込まれていた。
動力伝達系には、強化シングル乾式RSRクラッチ、ロック率40%のリミテッド・スリップ・デフ、そして強化ドライブシャフトが採用された。ファイナルギア比は、8:35:1と7:37:1の2種類が用意されていた。
ボディはさらなる軽量化と補強が施された
ボディは標準の鋼製モノコックを軽量化したものをベースに、通常の2倍のスポット溶接、カレラRSR譲りの溶接固定式リアショック・メンバー・ブレース、リア・トーションバー・チューブ周辺の補強、アルミニウムのマター社製ロールケージの装着により、ボディ剛性が格段に高められた。
フロントリッドとドアは軽量なアルミニウム製に変更され、フロントリッドにはスプリングやブラケットの類は一切取り付けられていなかった。衝撃吸収バンパーは取り外され、代わりにシンプルなグラスファイバー製エプロンが装着された。フロントブレーキの冷却効率を高めるため、大型の長方形インテークが2つ設けられ、その下部にはターボ用と同様のポリウレタン製チンスポイラーが備わる。このほか軽量化のために薄いガラスが採用された。

インテリアは、徹底した軽量化を図るべく極限まで簡素化された。そのため、一般的な内装材の多くが省かれたほか、防音材、リアシート、グローブボックスの蓋、そしてパワーウィンドウやオーディオシステムを含む多くの電装品も取り除かれた。通常のヒーターは、保護用アルミカバー付きの軽量な燃焼式ヒーターに置き換えられている。
重量配分を最適化するため、ドライサンプのオイルタンクはフロントへ移設された。また、大型化されたオイルクーラーがフロントエプロンの背後に配置されている。
公道仕様の911SC RSは、乾燥車両重量1057kg、最高速度 約246km/h、0-100km/h加速4.9秒という数値をポルシェは公表している。
当時のグループB『エボリューション』規定では、20台の生産が求められていた。ポルシェは21台を製作し、5台がロスマンズ・チームに渡され、15台がプライベーターにデリバリーされた。残りの1台は、同社のミュージアムに収蔵されている。


