ポルシェ918スパイダー

公開 : 2015.06.17 23:50  更新 : 2017.05.29 19:04

■乗り心地とハンドリング

“ESPシステムの介入マナーは上出来。‘オフ’ にすれば、言葉どおり完全にオフになるのも良い。” ― マット・ソーンダース(ロードテスト編集補佐)

わずわざ言うほどでもないが、918のメカニカル要素は、同メーカーの他のモデルとは根本的に異なっている。

しかし実際に乗ってみると、まぎれもなくポルシェなのだと感じる。

乗り味は分厚いサイドウォールのタイヤを履いたケイマンよりも911GT3寄り。ただボディはよりタイトに動き、地面への吸いつき方は911GT3よりも強い。

価格だけのことは(当然)ある。

可変ダンパーは悪路のうえでは明確な突き上げを示す。ステアリングはずっしりとしており、直線上ではドイツ流の安定感がある。ロック付近ではわずかに重みが増すものの、操舵に対するボディの動作は基本的には一定。

P1のように繊細なステアリングではないが、路面状況は子細に伝えてくれ、満足度も同等である。

P1のそれを ‘ナチュラル’ と表現するならば、918のそれは ‘agile(=軽やか)’ といったところだ。

それなりの速度まで追い込むと、反応が機敏なステアリングとタイトな身のこなしのおかげで、頬がゆるんでくる。エンジンはいつだって元気がよく、変速もクイックだ。

フェラーリ流マネッティーノと同じく、918にもオリジナルのドライブ・モードがそなわる。スイッチを弾けば、シフト・スピードは更に速まる。ただ、マニュアル・モードの方が好ましい……というのが筆者の意見である。

一方のサーキットでは、911GT3同様、いかなる天候をものともしない動力性能を見せつけながら、さらにレーシングカーに近いキャラクターであることがわかる。

まずトラクション。尋常ではない。グリップもアスファルトを引き剥がすのではないかと思えるほどだ。それにわずかなアクセル操作で、思うままに車体の向きを変えられるのもいい。

制動力は言うまでもない。ドライであれば113km/hから静止まで、わずか37.8mしか必要ない。P1よりも3.1m短い。この際のペダル・フィールにも問題はない。ボディが浮かび上がることもほとんどない。

狙ったラインと実際のラインは寸分たがわず、エイペックスからの脱出も極めて自然に行える。ポルシェだ。いつものポルシェだ。

そこからは他のポルシェでは見られない世界が広がる。カレラ4Sのトラクション、ケイマンのアジャスタビリティ、マカンのウエイトを混ぜあわせ、GT3のアツさを更に濃くしたような1.21Gもの横Gが掛かる。

P1ではとっくにズルズルとすべり始めるようなタイミングでも、918スパイダーは路面を掴んで離さない。

P1よりも1.1秒速く、同じコースを駆け抜けた。

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