ルノー・クリオ TCe 90 ダイナミック・メディアナビ

公開 : 2012.10.09 18:20  更新 : 2017.05.29 19:23

■どんなクルマ?

ルノー・クリオの初代と2代目は、そのクラスに求められているものを完璧に表現していた。シックなルックス、コンパクトなプロポーション、そしてダイナミクス。しかし3代目はそうではなかった。より大きくなって、より成長したのだった。それまでのクリオとは異なった洗練されて成熟したクルマ造りを感じさせるものとなったものの、ルノーらしさということでは疑問を感じ得ずにはいられなかった。ルノーもこのことは当然ながら知っていた。

ルノーは、2009年に、ルノーらしさを取り戻すために、新たに元マツダのローレンス・ヴァン・デン・アッカーをデザイナーとして招聘した。彼は、衝撃的なDeZirコンセプトを制作し、そのエッセンスを新しい第4世代のクリオに注ぎ込んだ。

新しい4代目のクリオは、そのベースは先代から引き継ぐ。しかし、より広く、より低く、そして長いホイールベースを持つ。しかし、大きくなったことが車両重量の増加には繋がらなかった。例えば燃料タンクをそれまでの55リッターから45リッターにしたり、より効率的なエンジンなどを採用した結果、先代よりもおよそ100kg軽く仕上がったのである。

ボンネットの下の大きなニュースは、新しいエンジンが2つ加わったことだ。そのひとつは、0.9リッターのターボ・ガソリン・エンジン、そしてもう一つが31.3km/lの燃費と83g/kmのCO2排出量という素晴らしい数値を持つ1.5リッターのターボ・ディーゼルだ。また、1.2リッターのターボ付き4気筒ガソリン・エンジンは、新しい6速のデュアル・クラッチが組み合わせられることとなった。

■どんな感じ?

第一印象は大きいという感じだ。しかし、そのデザイン・バランスは良い。インテリアも、プレーンなブラックやグレーのプラスティックが廃され、クオリティがアップしているのがすぐに分かる。また、そのキャビンは、以前よりも遥かに明るく、長距離走行に適したものとなっている。われわれのテストしたダイナミックと、よりスポーティなダイナミックSはターゲットが異なるため、その装備も違いがあるが、光沢のあるダッシュボードや、グロス・ブラックのトリム、ル・マンがテーマとなっているステアリング・ホイール、ドアパネルまわりのエア・ベントなどが共通した特徴だ。また、ダイナミックとダイナミックSには、タッチスクリーンの情報エンターテイメント・システムであるメディアナビが装着されている。

3代目よりも45mm低くなったシート・ポジションによって、かなり低い位置に座ることになる。しかし、高さを70mmも調整できるドライバーズ・シートや、アジャスタブル・ステアリングのお陰で、ポジションを決めるのは容易だ。

その0.9リッターのエンジンの感触をつかむのには、そう時間はかからない。3気筒というよりも4気筒エンジンのようなフィーリングで、静かな力強さを感じるパワーユニットだ。タウン・スピードでも落ち着いた感じで、低速走行時の乗り心地も素晴らしい。ボディ重量の軽減も低速時では良い影響をもたらしているようで、ステアリング・レスポンスも良い。その鋭さはフォードフィエスタ並と言ってよい(もちろんこれは賛辞だ)。

その一方で、高速走行では、ややサスペンションが柔らかすぎる気がしたのも事実。バンプを越えた際など、吸収しきれずに上下動に繋がってしまうのだ。また、高回転域ではエンジンの唸り声が気になった。

■「買い」か?

フォード・フィエスタと比較すると、ダイナミックさではまだ及ばないかもしれない。しかし、ルノーはこの新しいクリオでまた人々の注目を浴びるモデルを造り上げたことも事実だ。そして、クリオは癖のないクルマではない。

確かに、この0.9リッターのガソリン・モデルよりも、その経済性を考えれば、1.5リッターのディーゼル・モデルを選ぶ人は多いだろう。しかし、力強いこの0.9リッター・エンジンも捨てがたく、個性的だ。

ルノーは、更にこの新しいクリオのルック&フィールを、追加モデルによって伸ばしていこうと考えている。われわれの望むクリオが戻ってきた。そして、ルノーは再び成功を収めることになるであろう。

(マーク・ティショー)

ルノー・クリオ TCe 90 ダイナミック・メディアナビ

価格 13,995ポンド(176万円)
最高速度 182km/h
0-100km/h加速 12.2秒
燃費 22.2km/l
CO2排出量 104g/km
乾燥重量 1072kg
エンジン 直列3気筒898ccターボ
最高出力 89bhp/5000rpm
最大トルク 13.8kg-m/2500rpm
ギアボックス 5速マニュアル

おすすめ記事

 
最新試乗記