【現役デザイナーの眼】新世代魂動デザイン、ミゼットX、FRコペンなど、ジャパンモビリティショー注目の4台 #JMS2025

公開 : 2025.11.01 07:05

現役プロダクトデザイナーの渕野健太郎が今回取り上げるのは、ジャパンモビリティショー2025会場で注目したクルマたちです。マツダのコンパクトなコンセプト、ダイハツの2台、キアの乗用ミニバンをピックアップします。

マツダ・ビジョン・クロスコンパクト:新世代の魂動デザイン

『ジャパンモビリティショー(JMS)2025』が開幕しました。今回も多くの新型車が発表されましたが、その中で私が特に注目したクルマを4台ピックアップしましたのでご紹介します。

まず、マツダからは2台のコンセプトカーが発表され、その中でも『ビジョン・クロスコンパクト』に惹かれました。

次期マツダ2と思われるコンセプトモデル『マツダ・ビジョン・クロスコンパクト』。
次期マツダ2と思われるコンセプトモデル『マツダ・ビジョン・クロスコンパクト』。    山田真人

全長3825mm、全幅1795mm、全高1470mmのコンパクトなボディは『マツダ2』を連想させますが、デザインとしては『マツダ3ファストバック』のCピラーからリアフェンダーまでのスムーズな造形や、前回の2023年JMSで発表された『アイコニックSP』のシンプルさを組み合わせたような、『新世代の魂動デザイン』を感じさせます。

元々、魂動デザインはリフレクションの変化を最大の特徴としていて、その手法として大胆な立体構成で表現していました。今回のコンセプトカーもよく見ると構成としてはこれまでと同様なのですが、それをより時流に合わせて『見せびらかさない表現』になっています。

サイドシルエットはAピラーを立たせ、リアを寝かせるという往年の欧州コンパクトカーのそれです。ですのでその辺りは懐古趣味的な印象もあり、よく見るとルーフラインは割とリアまでフラットで、見た目だけでなく後席の居住性も意識していそうなシルエットをしています。

顔まわりはEVを想定しているのかグリルレスですが、これまでのグリル輪郭を彷彿とさせるディテールが付けられています。各社EV時代においてアイデンティティであったグリルをどう処理するのか試行錯誤しており、その課題に対してのマツダの回答であると感じました。

フロント、リアともに塊感の強い魅力的な造形ながら、リアコンビのグラフィックだけやけに目立つ印象もあります。これは『ビジョン・クロスクーペ』も同様で、リアコンビのグラフィックが造形にやや合っていないようにも感じました。

しかし全体的に非常に魅力的で、新型『CX-5』で感じた守りのデザインからまた攻めを感じられて嬉しくなりますね。

ダイハツ・ミゼットX:内装のCMFに感動

前回2023年のJMSもそうでしたが、ダイハツのコンセプトカーはどれも非常に魅力的なデザインをしています。今回発表された4台も、どれもユーザーフレンドリーなデザインでコンセプトとうまく合致していました。

ダイハツの市販車には様々な方向性の商品があり、デザイナーは本来こういうテイストにしたいんだなという意思を感じます。

ダイハツ・ミゼットXは、特に内装のCMFの出来に感動。
ダイハツ・ミゼットXは、特に内装のCMFの出来に感動。    上野和秀

『ミゼットX』は事前に写真が発表されていたので驚きはしませんでしたが、そのしっかりした作り込みにこだわりを感じました。このようなシティコミュータータイプのコンセプトカーは昔からあり、ほとんどはハリボテのような作りだった印象です。

しかし、このミゼットXのような内外装の作り、特に内装のCMF(カラー・マテリアル・フィニッシュ)の出来には感動しました。心が温まるコンセプトムービーも非常に魅力的で、こんなクルマがあったら楽しく平和だと感じた1台でした。

記事に関わった人々

  • 執筆

    渕野健太郎

    Kentaro Fuchino

    プロダクトデザイナー兼カーデザインジャーナリスト。福岡県出身。日本大学芸術学部卒業後、富士重工業株式会社(現、株式会社SUBARU)にカーデザイナーとして入社。約20年の間に様々な車をデザインする中で、車と社会との関わりをより意識するようになる。主観的になりがちなカーデザインを分かりやすく解説、時には問題定義、さらにはデザイン提案まで行うマルチプレイヤーを目指している。
  • 撮影

    山田真人

    Makoto Yamada

    1973年生まれ。アウトドア雑誌編集部からフリーランスカメラマンに転身。小学5年生の時に鉄道写真を撮りに初めての一人旅に出たのがきっかけで、今だにさすらいの旅をするように。無人島から海外リゾート、子どもからメガヨットと幅広い撮影ジャンルを持つ。好きな被写体は動くものと夕陽。
  • 撮影

    上野和秀

    Kazuhide Ueno

    1955年生まれ。気が付けば干支6ラップ目に突入。ネコ・パブリッシングでスクーデリア編集長を務め、のちにカー・マガジン編集委員を担当。現在はフリーランスのモーター・ジャーナリスト/エディター。1950〜60年代のクラシック・フェラーリとアバルトが得意。個人的にもアバルトを常にガレージに収め、現在はフィアット・アバルトOT1300/124で遊んでいる。
  • 編集

    平井大介

    Daisuke Hirai

    1973年生まれ。1997年にネコ・パブリッシングに新卒で入社し、カー・マガジン、ROSSO、SCUDERIA、ティーポなど、自動車趣味人のための雑誌、ムック編集を長年担当。ROSSOでは約3年、SCUDERIAは約13年編集長を務める。2024年8月1日より移籍し、AUTOCAR JAPANの編集長に就任。左ハンドル+マニュアルのイタリア車しか買ったことのない、偏ったクルマ趣味の持ち主。

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