と、ここまでは公道上で最高の部類の1台について述べてきたが、となれば真逆に位置する1台にも触れておいたほうがいいだろう。

それはなんと、われらがロード・テストで満点を付けたフォード・フォーカスRSであった。

ウェールズの反った路面はステアリングを好ましくない方向へ引っ張ろうとする。あの有能なフォーカスをもってしても、まんまとその餌食になってしまったのである。

ホットハッチとして、これを超えるものはないという確信はある。だが、今回は相手が悪かった。マット・ソーンダースの弁を借りれば「格が違った」ということだ。得点は92点。ただし、これはいわゆるブービー賞だ。

不名誉なブービー・メーカーの誹りを受けたのは、BMW M4 GTSであった。サーキット走行にフォーカスしたGTSは、時間とノウハウさえあればコースにあったセッティングを自ら施すことができるし、例えばニュルブルクリンクのような有名サーキットであれば、設定値のリストも用意されている。

しかし、今回走ったのは、月曜朝の北ウェールズだ。ノルドシュライフェがいかにバンピーでも、ここいらの路面に比べたら滑らかなものだ。

「いやぁ興奮した、銃撃されてるみたいで」とおどけたのはマイク・ダフだ。

いわく「ハーシュネスがとてつもなくて、スタビリティコントロールと戦争してるみたいだったよ」とはいうものの、希望の光明はある。

先代に当たるM3 GTSよりシャシー剛性は圧倒的に高い。公道テストでは直6ターボが本領を発揮するチャンスがほぼなかったが、サーキットでは異なる結果を見せてくれるのではないだろうか。

いや、そうあってほしいものだ。得点は73点。

もし、GTSではないM4を持ち込んでいたら、実力拮抗となりそうだったのがポルシェ718ケイマンSだ。

しかし、GTSを相手にした公道ラウンドでは、11台中4位につける129点を獲得して圧倒した。「以前にも増して思うけど、ケイマンの良さはやっぱりハンドリングに尽きるね」というアラン・ミュアーの感想は、伝統のフラット6を手放したこのエントリー・ポルシェのキモを押さえたものだ。

M4 GTSでは振動が止まらず跳ね回るような不整路面も、ヒラリ、ヒラリとこともなげにかわしていく。