三種三様、996/997/991型の911GT3を乗り比べ 先進技術は「過保護」になった?

公開 : 2017.05.20 00:10  更新 : 2017.05.29 19:03

スポーツ・ドライビングの実感を味わえる997

一方の997GT3はどうか? 数値が示すほどではないが、991よりは明らかに遅い。997単体でみると音はいいのだが、991のそれに比べると味気ない。グリップも劣る。中でも最も大きな違いは、ダンピング・マナーである。991が衝撃を吸収するようなところでも、997は足元をバタつかせることが多い。

997と991とのハッキリとした違いは、シフトノブとペダルの数だ。


その代わりに997は、何を与えてくれるか? 997にあって991にないものといえば、それは親密さだ。特に991の電制ステアリングによる差は大きいと感じる。また、左足がクラッチを踏まずに済む991と異なり、自分で変速する必要がある997はやはり「スポーツしている」気持ちになる。

ミス・シフトの確率が格段に高まり、シャシー・バランスが991に劣る。さらに安定感に欠けるとしても、自分で運転していると感じるのは997 GT3の方だ。こういうのも変だが、圧倒的な欠点をもつ997の方が、ドライビングそのものが楽しいのだ。

997以上に楽しい(?)996

997が感性に訴えかけることで991に勝負を仕掛ける一方で、996はどうなのだろう?  今日びの感覚をもってしても、もちろん996GT3は素晴らしいクルマなのだが、やはりテクノロジーの面では997/991 GT3と比べると、お話にならない。

しかし、驚かされる面もある。

英国の悪路のうえを徹底的に攻め込んでも、車体はきしみ音ひとつ発しないのだ。911史上もっとも評判の悪い構造でありながら、まるで1週間前にできたばかりのクルマに思える。それもロールス・ロイスが作ったかのように……。

さらにショッキングなのは、997と同じくらいに楽しいと思える点だ。コーナーに矢のごとく飛び込み、ギュッと引き締まったスプリングが路面を離さない。スロットルの子細な操作で向きを変える。

5000rpmまでは眠たいエンジンがいきなり目覚めるのも気持ちがいい。電子制御によるセーフティ・ネットがないゆえ、震えあがるような怖さを味わえるのもいいじゃないか。すみずみまでアナログ。全責任を自分で負う。硬派なクルマはこうあるべきなのだと私は思う。

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