T-ハイブリッドで磨いた最高峰 ポルシェ911 ターボS 超えるモデルが思い浮かばず

公開 : 2025.11.06 19:05

T-ハイブリッドで711psを得た、992.2型の911 ターボS くまなく高品質な内装 160km/h超でも衰えない加速力 車重を感じさせない精緻な操縦性 乗り心地も快適 UK編集部が試乗

T-ハイブリッドの獲得で711psに

992型の後期モデル、992.2型ポルシェ911 ターボSがビッグ・アップデートを受けた。かくして、史上最も完成度の高い万能スーパーカーと表現できるだろう。

最高出力は711psで、最高速度は321km/h。従来どおり四輪駆動で、0-100km/h加速は2.5秒でこなす。これで英国価格は19万9100ポンド(約4062万円)なのだから、お買い得とすらいいたくなる。

ポルシェ911 ターボS(欧州仕様)
ポルシェ911 ターボS(欧州仕様)

この動力性能を叶えた鍵が、911 GTSにも採用されたT-ハイブリッド。水平対向6気筒エンジンと8速デュアルクラッチATの間に、81psの駆動用モーターが実装されている。

動作電圧は400Vで、CO2排出量よりスピードを重視した設定にある。ニュルブルクリンクのラップタイムは、アップデート前のターボSから14秒も縮めたそうだ。また高電圧システムにより、ベルト駆動だった補機類は電動化されている。

くまなく高品質な内装 実用性に不足なし

インテリアは、通常の992型と同様に素晴らしい。シフトセレクターはスポーティではないかもしれないが、くまなく高品質。肌に触れる部分の素材は上級で、プラスティック製部品も、安っぽさとはかけ離れている。プレミアムな雰囲気が充満する。

運転姿勢も理想的。911 GT3と同じロータリー式のイグニッションスイッチなら、もっとうれしい。メタリックグレーの化粧トリムは、「ターボナイト」と呼ぶらしい。

ポルシェ911 ターボS(欧州仕様)
ポルシェ911 ターボS(欧州仕様)

実用性は、高性能スポーツとして不足なし。フロントのボンネット下へ充分な荷物を載せられ、ドアポケットも大きい。+2のリアシートは無償オプション。必要なら、ここにもカバンを置ける。ミドシップより、使い勝手は間違いなく優れている。

160km/hを過ぎても衰えない鋭い加速力

カレラGTSとターボSのパワートレインで、最大の違いはターボが1基ではなく2基なこと。電気モーターで補助されつつ、タービンは排気ガスを受けて14万5000rpmで回り、吸気を圧縮する。モーターは、必要に応じて発電もしてくれる。

その結果、フラット6のレスポンスは市販車で最速級。発進直後から滑らかに、凄まじい勢いで速度を上昇させていく。シフトアップ直後も同様で、160km/hを過ぎても勢いは衰えない。ドイツにいて、遠方まで急ぐ場合は、このポルシェがベストだろう。

ポルシェ911 ターボS(欧州仕様)
ポルシェ911 ターボS(欧州仕様)

マフラーはチタン製で、従来より7kgも軽いという。カーボンセラミック・ブレーキは標準。ディスクの直径は、前が420mm、後ろで410mmもある。

サスペンションは、前がマクファーソンストラットで、後ろがマルチリンク。アダプティブダンパーとアクティブ・アンチロールバー、後輪操舵システムが実装される。電圧400Vで制御されるため、すべての反応は極めて素早い。かなり複雑なシステムだが。

記事に関わった人々

  • 執筆

    マット・プライヤー

    Matt Prior

    役職:編集委員
    新型車を世界で最初に試乗するジャーナリストの1人。AUTOCARの主要な特集記事のライターであり、YouTubeチャンネルのメインパーソナリティでもある。1997年よりクルマに関する執筆や講演活動を行っており、自動車専門メディアの編集者を経て2005年にAUTOCARに移籍。あらゆる時代のクルマやエンジニアリングに関心を持ち、レーシングライセンスと、故障したクラシックカーやバイクをいくつか所有している。これまで運転した中で最高のクルマは、2009年式のフォード・フィエスタ・ゼテックS。
  • 翻訳

    中嶋けんじ

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

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