BMW Z8試乗記 相場は正直? 「オリジナル」の理由を探る

公開 : 2017.10.15 17:10  更新 : 2017.10.16 06:06

処理の安っぽさを補ってお釣りが来る

Z8、特にふたり乗りロードスターは、1950年代に生産されたオリジナルの507よりもあらゆる面で大きいにもかかわらず、デザイン上のマジックで、かなり小さく見える。全長4400mm(つまり507よりも25.4mm長い)、全幅1830mmだ。それでも、全高は、最近のポルシェ911よりもさらに低い。

BMW 507を間近で子細に見たことのある顧客はほとんどいないという意見には一理あるものの、Z8のスタイリングは幸いなことに(例えばフォードGTのような)507の単なる焼き直しには終わっていない。Z8の面目が保たれているのは、おそらく、そのおかげだろう。

いずれにしても、魅力的なクルマだ。姿勢は完璧であり、弓なりのウィングラインと細身のテールライト群のおかげでリアからの眺めのほうが美しい。他の多くのレトロデザインのクルマとは違い、不自然な感じがなく、独自の個性的な外観を備えている。

それでも、細部を見れば、おそろしくチープで悪趣味なベントを筆頭に1点か2点、確かに時代遅れの面が目につく。

無論、良い点もあり、少なくともキャビンは快適であることは間違いない。シートは、体との接点を包み込み、圧迫感はない。実際のドライビングポジションも秀逸で、多くのスーパーカーのように、ステアリングホイールとペダルが無秩序に片側に寄っているなどということがなく、適切な位置に配置されている。

すべてのスイッチがZ8特製であり、流用されている部品がないのは素晴らしい。これは、スペシャルな高級感に一役買っているものの、計器類がダッシュボードの中央部に集中しているため、いささか見にくい。

全体的な効果として、粋なデザインであるよりは、ピンプモービル風なため、丈の長い毛皮のコートを羽織り、羽のついたフェドーラ帽をかぶらなければならないような気分になる。

ボディと同色のプラスティック、つや消しのアルミ、光沢のあるクロムメッキ、そして緋色の配色は、スタイリングスタジオでは映えること請け合いだが、ブラックネルで渋滞に巻き込まれ、立ち往生している時には、単に恥ずかしいだけで、オプションで、透明になるマントもあれば良かったのになどと考えてしまう。

しかし(この「しかし」というところを強調したいのだが)、Z8の強烈な性能は、インテリアの処理の安っぽさを補ってお釣りが来る。それに、このエグゾーストサウンドがなんとも言えない。

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