BMW Z8試乗記 相場は正直? 「オリジナル」の理由を探る

公開 : 2017.10.15 17:10  更新 : 2017.10.16 06:06

目を見張る勢いで上がりゆく中古相場

一部のメディアは、レトロ風のデザイン戦略に食傷気味で懐疑的ですらあったが、市場の反応は良好で、£8万(1187万円)という価格にもかかわらず、生産が需要に追いつかなかった。

この価格は、組み立て時の仕上げにかなりの量の手作業が必要とされ、1日に10台以上は生産できない、という実情を反映したものだった。顧客は、オプションとして、BMWのそれぞれの部門によるカスタムペイント仕上げと内装の特別仕上げを指定することも可能だった。

Z8の生産は2002年11月に終了したが、そこで話は終わらない。2003年、Z8をベースにしたアルピナV8ロードスターが登場した。これは、スポーツカーとしての性格を弱め、GT志向のテイストになった。

M5エンジンは、アルピナB10 V8Sの4.8ℓエンジンに道を譲った一方、それまでの6速マニュアルトランスミッションが、5速ステップトロニックに交換された。最高出力は380psに減ったものの、奇妙なことに、電子的にコントロールされた最高速度は258km/hに引き上げられた。

アルピナ社では、当初、自社バージョンのM73 V12エンジンを押し込みたかったが、エンジンサンプがラック&ピニオンステアリングシステムと干渉するため、断念した。

BMWZ8よりもリラックスできるツアラーにするため、サスペンションのセッティングをソフトにし、タイヤもランフラットタイプから従来型に交換した。555台が生産され、そのうち450台が米国に輸出された。

そして記念すべきことに、アルピナ社単独による製品としては初めて、BMWの北米ディーラー網により販売された。英国で販売されたV8ロードスターは8台にとどまり、その中の1台を買ったのがクルーナー歌手のローナン・キーティングだった。

2003年までに合計で5703台のZ8が生産され、その数は、もともとの507の生産台数を大きく上回った(BMW 507は、252台しか生産されなかった)。他のスーパーカーと同様、中古車の価格が一時期急落したものの、驚くほど速く反騰した。

「最初の数年間は、価格がほぼ半減しました」そう話すのは、長年のZ8オーナーであり、ヘキサゴン・モダン・クラシックスの社長ポール・マイケルズ氏だ。

「正直なところ、ほぼ新車のZ8を£4万(594万円)で買える時期もありました。ところが、いつの間にか、価格が£6万(890万円)、次に8万(1187万円)へと跳ね上がり、それ以上になった。

なんらかの不思議な理由から、価格がいつも2万ポンド単位で上がるように見える。走行距離が少なく、程度の良いZ8は、現在、£15万(2256万円)から£18万(2671万円)で取引されている。

アルピナ版にはわずかにプレミアムが付き、£16万(2374万円)から£19万(2819万円)だ。走行距離の多いZ8でさえ、英国では£10万(1484万円)は越えている。

「われわれは、ドイツのマーケットの動向を追っていますが、現時点におけるドイツ国内の需要はとても旺盛です。BMWはZ8を1台生産するたびに赤字が増える状態だったので、同社が、Z8のようなハンドメイドのクルマを少量生産することは二度とないのではないかと思います。それだけでも、価格が上昇し続ける十分な理由になると思います。507の例を見ればわかります。ほんの5年の間に値段がなんと4倍になってしまったのです」

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