ハイパフォーマンス・ワゴン対決  M5 vs RS4 vs E63 AMG 前編

公開 : 2017.11.19 11:40  更新 : 2017.11.19 11:54

ワゴンに乗っているのを忘れる走り

このE63で直線路をすっ飛ばしていると、ほかに「高性能」を名乗るワゴンがいるなんてちゃんちゃらおかしくなってくる。

同じようなサイズでブランド的にもガチンコ関係にあるM5と比べても、1歩も引けを取っていない。それどころかE63の単純明快な直線加速を知ってしまったら、M5には何かが欠けているような気までしてくる。

Mの血統をきちんと受け継いていることをついさっき確認したはずなのに。E63は明快に「踏めば走る」を突き詰めたデバイスで、オマケにサウンドでもウットリできる。キャビンのスイッチ類はわかりやすいし、ワゴンだから実用性も高い。ルックスも悪くない。というか、むしろグッドだ。

そんなわけで、MTを捨ててパドルシフトだけになってしまったM5がそのせいで軟弱になってしまったかどうかの最終結論は、もう少しのあいだ保留する。

とりあえずこのクルマのV10エンジンは、メルセデスのV8のようには洗練されていない。けれど5000rpmを超えてからのキョーレツなパンチは合格。

バックゲートのあるクルマにこれ以上の刺激の望むとしたら、フォード・スーパーバン3を持ってくるくらいしか手は残ってない。何しろ2速から3速に8000rpmで手動シフトするときあたりのヘッドアップ式スピード表示の進み方といったらタダゴトじゃないくらい速い。  

けれどワゴンに乗っている気がしないのは強烈な加速Gのせいだけではなくて、後ろが重くてゆるいはずのクルマに乗っている感覚がまるでないからだ。

だから飛ばすとものすごくゴキゲンなクルマにM5がなっていたとしても取り立てて驚くようなことじゃないし、実際そうなっている。

ボディシェルの剛性に合わせてチューニングされたサスペンションのダンピングとレートの絶妙さといったら完全にE63を超えた。それに公道で出せる速度域なら、そのあたりの絶妙さで頂点に君臨するM5サルーンに何も劣っていない。  

比べるとE63はダンピングとスプリングレートが強すぎた。基本的な乗り心地はM5と同じくらい快適だし、それは高速をぶっ飛ばしても大きくは変わらないのだけれど、段差とかキャッツアイみたいなとがった入力でガツンとくる。

M5は平気。しかもステアリングがクイックかつダイレクトなところもM5はイイ。

後編へつづく。

AUTOCAR JAPAN誌 50号

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