「漆黒への回帰」 マクラーレンP1、デビューから5年 いま乗ると?

公開 : 2018.02.03 11:40

「色気のなさは意図的したもの」

3万2000kmを激しく走り込まれた今回の試乗車とマクラーレンの保有する2台のうち1台は素晴らしい内装が施されており、無塗装のカーボンファイバーパネルがただの飾りに使われるクルマもあるいっぽうで、一見贅沢仕立てのようで実は簡素志向で造られた類のものである。

ここではパネルの表面全てが原材料のままにさらけ出されている。重さは性能の敵であり、F1から着想を得て航続距離でなく動力性能に特化したとはいえ、モーターやバッテリーを加えた上で車重1500kgを切るのは七難八苦となった。

だからキャビン内部には本当に最小限のモノしかない。広大な窓にガラスのルーフ(後者は720Sが採り入れたテーマだが)がなければ、裸のカーボンファイバーで象られた世界の海を駆け巡るレーシングヨットの内側のごとく真っ黒なのだ。

それは意図的なものだと、パリー・ウィリアムズは言う。

「P1の開発中、哲学上の議論になったことがあります。12Cの時はタービン音を聞かせないのが至上命題でした。しかしP1開発陣の中には、せっかくの高圧ターボエンジンなんだからこのクルマの特徴としてしっかり音を盛り立てて聞かせようと言う者がいたのです」

そしていやはや全く、それがP1の骨の髄まで染みついた性格なのだ。始動すると図太くも落ち着いたアイドリングに移るが、そこには可愛らしい電気音や電子音も混じる。そこにターボの回転上下に伴うヒュー、シューという音が同時進行で響くのが、あたかも大きく息をつく一流アスリートの気管の中にいるかと思わせる。それはもう凄まじい騒音だが、同時に引きつけられる。自然吸気V12ではないからといって、それがどうしたというのか?

「フェラーリが、ラ フェラーリで古典的な恐るべきサウンドを見せつけてくるだろうことは分かっていました」とパリー・ウィリアムズ。「われわれの手の内にはV12がないから別の方向に進んだわけで、これで行くしかないのです」

「WECのLMP1カーの音は、ひどい不協和音でがなり立てる感じでしょう? 高電力を扱うスイッチに平歯車に変な装置の数々。それらのどこにわれわれを興奮させる本当に素晴らしい独特の機能的な雰囲気が漂い、またわれわれが生産車に使うことのできる手がかりがあるのかを見つけて、同じ手法でそれらの域に達する必要があります。それがわれわれの正直と考えるやり方ですし、今後も続けていくものです」

ふたつのターボチャージャーからの過給だけでなくエンジン全負荷時以外と減速時に力を取り出す電気モーターが煩雑さを増しそうな割には、P1の正直な仕上がり具合は注目に値する。

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