BMW 320d GT SE

公開 : 2013.03.15 16:21  更新 : 2017.05.29 18:00

■どんなクルマ?

3シリーズGTは、リア・シートとトランクのスペースを拡大した3シリーズである。このサイズのクルマでありながら、ひと回り以上大きなサイズのクルマと同じようにリア・シートで足を延ばすことができるということに驚くかもしれない。しかも、リアに3人座ったとしても、30分以上耐えることができるのだから驚きだ。実は、3シリーズGTは、3シリーズ・ツーリングや、5シリーズ・サルーンよりも多くのスペースを確保しているファミリー向けのモデルである。

そのスタイルは5シリーズGTの手法を基本的には引き継ぐ。しかし、5シリーズGTが、巨大なスペースと引き換えにお世辞にも美しいスタイルと言えなくなってしまったのとは異なり、3シリーズGTは、バンパーがリア・ヘビーで、Cピラーが貧血気味に細いものの、それでも調和がとれた仕上がりを見せるてくれる。確かにハンサムなクルマとは言いがたいが、このクルマをスポーティな5ドアMPVクーペと解釈するのであれば、そのスタイルも理解できようというものだ。

このクルマは、よりスペースをというカスタマーの要求に答えたモデルなのだ。従って、あなたが今までのサルーンのリアで満足しているのであれば不要なクルマかもしれない。

SUVのように高くなったシート・ポジションからも、このクルマをGTと呼ぶのは相応しくないのかもしれない。誤解を招くネーミングであるのも事実だ。

とにもかくにもこの小型のGTが、5シリーズGTよりもバランスがとれたダイナミックなルックスを持つモデルであることは間違いない。加えて、非常に実用的なのだ。そのブート・スペースは520ℓとツーリングよりも大きく、リア・シートを畳めば1600ℓという巨大なスペースが確保される。そのリア・シートは19度の角度の範囲内で15段階に背もたれを調節可能というもの。

この3シリーズGTは、すべてのモデルで電動テールゲートが標準装備となる。この電動テールゲートは、リア・バンパーの下で足を動かくと自動的にオープンするという仕組みを持つ。また、ドライバー側のドアにもリリース・ボタンがあるが、これは少しばかり見つけにくいかもしれない。

3シリーズGTは非常に大きいクルマであり、そのドライビング・ポジションはBMW X1とほぼ同じ高さだ。ボディ・ウエイトはツーリングよりも重く、そして重心もサルーンやツーリングよりも高い位置にある。このことが、ドライビングにどのような影響をもたらすのだろうか。

■どんな感じ?

GTプロジェクト・リーダーであるマーティン・デリッツによれば、GTのセッティングは3シリーズ本来の機敏さを維持することを念頭において開発されたという。しかし、さらにファミリー向けの快適性にプライオリティがおかれたともいう。

熱心な3シリーズのドライバーには必需品である、750ポンド(11万円)のオプションとなるMスポーツ・ダンパーは、多くの状況下で軽やかさとしなやかさを提供してくれる。しかし、路面の隆起や大きなコブには、サルーンでは感じられなかった見苦しい突き上げが起きてしまう。特に、リア周辺に奇妙な垂直方向のバウンドが感じられるのだ。

サスペンション・セッティングをコンフォートからスポーツに切り替えると、やや安定方向に振られるような気がする。全体的なしなやかさは失わないままだ。しかも、ボディ・ロールは抑えられる。

ステアリングはコンフォート・モードだと過度に軽い感じがするが、それでも平均点以上のフィーリングをもたらしてくれる。50:50という前後の重量配分もあって、コーナリング・パフォーマンスは良い。但し、その限界はエンジン・パワーによって制限されてしまうことになる。

もちろん、そのエンジンはアイドリングからレブ・リミットまで秀逸で、全体的に見ても出来の良いパワー・ユニットだ。滑らかでトルクカーブも厚い。しかし、GTと呼ばれるクルマに搭載されるものとしては力不足かもしれない。とはいうものの、街中で乗るには充分なパフォーマンスで、320d GTはリラックスしたクルーザーの味わいも持つ。

トランスミッションも素晴らしい。8速という多ギアにも関わらず、ギア選びを間違うこともなく、スポーツ・モードにすればグイグイと引っ張ってってくれる。ただし、エコ・プロ・モードに関しては、高速クルージングでの燃費は伸びるかもしれないが、通常の走行ではあまり燃費向上は期待できるものではない。

もし、あなたが3シリーズのドライバーであるなら、3シリーズGTの後の残りは、3シリーズと大きく変わるところはない。ダッシュボード・デザインやトリムなどもほぼ同一。サルーンやツーリングと同様に、SE、スポーツ、モダン、Mスポーツといったトリムを選ぶことができる。このうち、SEとMスポーツが人気モデルとなることだろう。

■「買い」か?

3シリーズGTは、ツーリングより1300ポンド(19万円)、サルーンより2600ポンド(38万円)高い。後はその価格を、エクストラ・スペースのために費やせるかどうかだ。また、Mスポーツ・パッケージは、3シリーズGTのルックスを大幅にアップさせるので、それなりの価値がある選択と言える。但し、その場合はアダプティブ・ダンパーをオプション選択することをおすすめする。

確かに、決して安い3シリーズでもなければ、ハンサムな3シリーズでもない。そして、時折みせる不安な乗り心地と、ノイズの多いエンジンも気にはなるところだ。しかし、ファミリー・ユースということを考えれば、最高の3シリーズであることは事実である。

(リチャード・ブレムナー)

BMW 320d GT SE

価格 31,310ポンド(454万円)
最高速度 225km/h
0-100km/h加速 7.9秒
燃費 20.4km/ℓ
CO2排出量 129g/km
乾燥重量 1575kg
エンジン 直列4気筒1995ccターボ・ディーゼル
最高出力 182bhp/4000rpm
最大トルク 38.7kg-m/1750-2750rpm
ギアボックス 8速オートマティック

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