ツインターボの伝道師 マセラティ・ビトゥルボ(1) イタリア版BMW 3シリーズな俊足クーペとサルーン 目的は生産倍増
公開 : 2026.03.08 17:45
マセラティの生産倍増を狙った量産初ツインターボのビトゥルボ 華やかなイタリアン・インテリア クーペの特徴を継ぐサルーンにスパイダー 集大成はギブリ UK編集部が濃い味の5台を振り返る
短時間に圧力を高め、負荷分散できたツインターボ
クルマの技術革新には、巨大な予算が必要になる。だが、窮地から生まれる挑戦が、飛躍的な進化へ繋がることもある。
アレハンドロ・デ・トマソ氏が1970年代に経営を担ったマセラティは、ポルシェがレースで実力を証明したツインターボを、量産車で初めて導入。エントリーモデルの訴求力を、大幅に向上することへ成功した。今回は、その系譜にある5台を振り返りたい。

ビトゥルボ誕生の目的は、当時1000台前後だった生産数を倍増させること。イタリアで施行される、2.0L以上のクルマへ課せられる重税を回避しつつ、秀でた性能を与えれば、メルセデス・ベンツやBMWなどの競合を超える支持を集めると予想された。
半世紀前のターボは、黎明期にあった。信頼性とブーストラグという課題が、採用に二の足を踏ませていた。だが、小さなターボを2基並行に並べるパラレル式のツインターボが、解消のいとぐちになった。短時間に圧力を高め、ターボ内の負荷を分散できた。
華やかなイタリアン・インテリアで魅了
ビトゥルボの発売は1981年。2.0L V6エンジンに日本のIHI社製ターボを2基並べ、1基のキャブレーターへ圧縮空気が送られた。ミドシップのマセラティ・メラク用ユニットをベースに低予算で開発され、インタークーラーはなく、シンプルな構造といえた。
サスペンションは、前がマクファーソンストラットで、後ろがセミトレーリングアーム。意図的に、構造はE21型BMW 3シリーズへ寄せられていた。前後ソリッドディスクのブレーキと、ラック&ピニオン式のステアリングに、アシストは備わらない。

今回の中では、ホワイトのクーペが初期のビトゥルボ。開発の力点は、エンジンとインテリアに集中していたことがわかる。ベロアシートには、シャンパン・ゴールドのストライプ。ダッシュボードにはウォルナットパネル。ブラウン・レザーも好ましい。
スタイリングに目立った個性はないかもしれないが、華やかなイタリアン・コクピットが乗る人を魅了する。格子状にブラックとゴールドで染められた、天井も美しい。
発進直後から腕に応えるステアリングの重さ
ダッシュボードには、マセラティへ期待するであろう、ラサール社製のアナログ時計はない。これは、1985年に追加された装備だった。かわりに、当時はハイテクに感じられたのかもしれない、デジタル時計が収まる。
長めのクランキングを経て、キャブレーター・ツインターボは目覚める。アイドリングは静かだが、右足を軽く傾ければ、ドライで硬質な吸気音が響いてくる。

発進直後から、ステアリングの重さが腕に応える。ロックトゥロックは、3.5回転と見た目によらずスロー。速度域が上昇してもフロントの反応は穏やかで、両腕を大きく動かすことになる。とはいえ、ZF社製の5速MTはクロスレシオで、ダッシュは軽快だ。
低域でのラグは小さくないが、2.0L V6ツインターボを3500rpmまで回せば、2基のターボがブーストを高めつつ182psを開放。パワーデリバリーはシームレスでなくても、急に背中が蹴られるような勢いまではない。










































































































