約250万人が無自覚運転という驚愕の社会現実 ホンダが『緑内障疑似体験シミュレーター』に注力する理由

公開 : 2026.03.09 17:05

ホンダが『緑内障疑似体験シミュレーター』に関する説明会を開催。桃田健史が参加しましたが、事の重要性を理解していなかったことを取材中に反省したといいます。そこには驚くべき社会現実がありました。

事の重要性を理解していなかった

まさか、こんなことになっているとは。今回の取材を通じて様々な点で驚きがあった。

本田技研工業(以下ホンダ)から『緑内障疑似体験シミュレーター』に関する説明会の案内が来た時点では、事の重要性を理解していなかったことを取材中に反省した。

ホンダが開催した『緑内障疑似体験シミュレーター』に関する説明会。
ホンダが開催した『緑内障疑似体験シミュレーター』に関する説明会。    桃田健史

順を追って説明したい。

『メガネのパリミキ』は3月4日、世界緑内障週間である3月上旬に『パリミキ×ホンダ・ドライブシミュレーター体験』に関する一般向けイベントを、栃木県のパリミキ小山店で開催すると報道陣機関向けに連絡した。

そもそも、緑内障とは何か? 日本緑内障学会の緑内障診療ガイドラインでは、緑内障を次のように定義している。

『視神経と視野に特徴的変化を有し、通常、眼圧を十分に下降させることにより視神経障害を改善もしくは抑制しうる眼の機能的構造的異常を特徴とする疾患』。

同会の多治見疫学調査(緑内障有病率調査を目的として岐阜県多治見市で行われたもの)によれば、緑内障は日本人の失明原因の第1位。年代では40歳以上で5%程度、60歳以上では約10%が発症するとの報告がある。

そうした緑内障の人がクルマを運転すると、どのような課題があるのか。

ホンダは自社で蓄積してきたドライブシミュレーター技術を活用して、緑内障を擬似体験できるシミュレーターを開発。

パリミキとは、2024年に緑内障に関するタブレッド型模擬体験機を使い、パリミキの埼玉県鴻巣店と三重県鈴鹿店で啓蒙活動を始め、2025年には全国のパリミキ店舗で緑内障疑似体験に関する啓発用動画による一斉キャンペーンに拡張。今年も同活動を継続し、小山店ではシミュレーター体験イベント開催となった。

想像していた以上に難しい安全運転

では、緑内障ではない人が緑内障疑似体験シミュレーターを使うとどのように見えるのか。実際、筆者が試してみた。

シミュレーターといっても、普通の椅子と机があり、前方には上下ふたつのモニターが設置されているだけ。そこにゲーム機器用のハンドル、アクセル、ブレーキの操作デバイスが置かれているというシンプルなレイアウトだ。

手前が緑内障疑似体験シミュレーター、奥はホンダが量産している大型ドライブシミュレーター。
手前が緑内障疑似体験シミュレーター、奥はホンダが量産している大型ドライブシミュレーター。    桃田健史

その隣には、クルマのコクピットを再現し目の前には三面の大型モニターがある、ホンダが量産している大型ドライブシミュレーターがあったため、『こちらはまだ初期的な開発段階なので、どこまで再現性があるのだろう?』と半信半疑で体験がスタートした。

最初のコース設定は、片側2車線の市街地を最高速度50km/hで直進するもの。まず驚いたのは、周囲の建物や道路は普通に見えるのものの、対向車線のクルマの姿が見えたり消えたりすることだ。

そうした状態で青信号の交差点に差し掛かると、対向車線から右折するクルマが目に入ってこない。というより、まったく見えない。それがいきなり、目の前に出現するのだから、急ブレーキで衝突を回避するのが非常に難しい。

また、視界の上部にある信号機そのものがたまに見えなくなることがあった。

その後、制限速度30km/hの細い道に入ると、信号機のない交差点で止まれの表示がない場合、左右方向からのクルマやトラック、横断歩道を渡る歩行者、横断歩道がないところから道路を横断しようとする電動車椅子など、様々な乗り物や人がいきなり出現したり、いきなり消えたりする。

記事に関わった人々

  • 執筆 / 撮影

    桃田健史

    Kenji Momota

    過去40数年間の飛行機移動距離はざっと世界150周。量産車の企画/開発/実験/マーケティングなど様々な実務を経験。モータースポーツ領域でもアメリカを拠点に長年活動。昔は愛車のフルサイズピックトラックで1日1600㎞移動は当たり前だったが最近は長距離だと腰が痛く……。将来は80年代に取得した双発飛行機免許使って「空飛ぶクルマ」で移動?
  • 編集

    平井大介

    Daisuke Hirai

    1973年生まれ。1997年にネコ・パブリッシングに新卒で入社し、カー・マガジン、ROSSO、SCUDERIA、ティーポなど、自動車趣味人のための雑誌、ムック編集を長年担当。ROSSOでは約3年、SCUDERIAは約13年編集長を務める。2024年8月1日より移籍し、AUTOCAR JAPANの編集長に就任。左ハンドル+マニュアルのイタリア車しか買ったことのない、偏ったクルマ趣味の持ち主。

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