量産初ツインターボの進化 マセラティ・ビトゥルボ(2) ポルシェ911に迫ったカリフ ザガートがルーフ切ったスパイダー

公開 : 2026.03.08 17:50

マセラティの生産倍増を狙った量産初ツインターボのビトゥルボ 華やかなイタリアン・インテリア クーペの特徴を継ぐサルーンにスパイダー 集大成はギブリ UK編集部が濃い味の5台を振り返る

当時のBMW 325iより優れた動力性能

マセラティ・ビトゥルボ 430の運転姿勢は、しっくり来ない。ダッシュボードとステアリングホイールは乗り手へ遠く、3枚のペダルが近すぎる。いかにもイタリア車のそれで、身長が低めの大人でも、丁度良いポジションは見つけにくいはず。

同時期のBMW 325iより、動力性能は優れた。2.8L V6エンジンにインジェクション・ツインターボが組み合わされ、最高出力は289ps。ホイールベースは、4ドア化によってクーペのビトゥルボより長い2600mmあり、安定性も増している。

マセラティ・ビトゥルボ 430(1987~1994年/英国仕様)
マセラティ・ビトゥルボ 430(1987~1994年/英国仕様)    マックス・エドレストン(Max Edleston)

アクセルペダルを深く倒せば、急上昇するパワーをサスペンションやタイヤが受け止めきれないほど。傷んだ舗装では、落ち着きも乏しい。滑らかな路面なら特急サルーンになるが、英国の環境では実力を引き出しにくい。

この車両は走行距離が長く、ボディがヤレ気味だとはいえ、製造品質は同時期のBMW 3シリーズに届かず。乗り心地は良いものの、凹凸を越える度に内装がきしむ。

ザガート社が設計した+2のスパイダー

4ドアサルーンの次に、マセラティを率いたアレハンドロ・デ・トマソ氏が必要だと考えたのは、BMW 3シリーズに倣ってコンバーチブルのスパイダー。クーペのルーフを切り取る設計と製造は、イタリア・ミラノのカロッツエリア、ザガート社へ託された。

シャシーは強化されつつ、大胆にホイールベースを200mm短縮。直進安定性は低められたが、全長が短くなり、ウェッジシェイプ・ボディのプロポーションは改善している。

マセラティ・ビトゥルボ・スパイダー(1984~1994年/英国仕様)
マセラティ・ビトゥルボ・スパイダー(1984~1994年/英国仕様)    マックス・エドレストン(Max Edleston)

+2のリアシートは、カーペット敷きのベースに、マジックテープで四角いクッションが貼られただけ。背もたれの形状も、長時間座ることを想定したものとはいい難く、ソフトトップは手動だった。

マセラティ・ビトゥルボ・スパイダーの発売は1987年で、英国へ導入されたのは、2.8L V6ツインターボの430のみ。ブラックのボディにホワイトの幌の1台は、1989年式だ。

スパイダーをベースにしたクーペ、カリフ

曇り空を視界に入れつつ発進させると、想像以上にボディ剛性は高い。サルーンの430から乗り換えると、敏捷性の高さに驚く。ところがサスペンションは柔らかすぎ、ホイールベースの短さと相まって、操縦性に優れるとはいいにくい。

乗り心地は快適といえ、豪華なインテリアと相まって、新車時は上級オープンカーを求める人からの支持が低くなかった。ビトゥルボ全体の、1割をスパイダーが占めたほど。

マセラティ・ビトゥルボ・スパイダー(1984~1994年/英国仕様)
マセラティ・ビトゥルボ・スパイダー(1984~1994年/英国仕様)    マックス・エドレストン(Max Edleston)

思い切ったことを好むザガートは、このスパイダーをベースに、クーペも製作している。2ドアのビトゥルボとは別に。それが極めて希少なカリフで、ショートホイールベースのオープンボディへ、固定ルーフを溶接するという工程を経ていた。

発売は1988年で、エンジンはスパイダーと同じ、最高出力289psの2.8L V6ツインターボ。軽量なボディにショートなギア比が貢献し、0-100km/h加速は4.8秒が主張され、ミドシップのマセラティ・ボーラ以上の動力性能を誇った。

記事に関わった人々

  • 執筆

    チャーリー・カルダーウッド

    Charlie Calderwood

    英国編集部ライター
  • 撮影

    マックス・エドレストン

    Max Edleston

    英国編集部フォトグラファー
  • 翻訳

    中嶋けんじ

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

UK編集部渾身!春のターボ祭りの前後関係

前後関係をもっとみる

関連テーマ

おすすめ記事