フォード・パフォーマンス 比較試乗 GT×フィエスタST 瑠璃色の血統

公開 : 2018.11.04 07:40  更新 : 2018.11.08 16:29

乗るほどに実感する、同じ血統

フィエスタSTに搭載されるエンジンは、1.5ℓの3気筒ターボ。GTが搭載する3.5ℓのV型6気筒ツインターボエンジンの半分にも及ばない。さらに最高出力は199psで、わずか1/3。盛大なメカニカルノイズという点を除いて、共通点は殆どない。フィエスタSTの3気筒は、5500rpmあたりでピークを感じられるのだが、GTの6気筒は、より高回転域を目指そうとする。

しかし、両車ともに、ステアリングフィールは極めて敏感。クルマの挙動が神経質で気まぐれに感じられるひともいるだろう。そして、両車ともに高速道路程度のスピードになると、運転に楽しさがにじみ出てくる。さすが同じ血筋だ。

アクセルを踏み込み、プッシュしていくと、組み合わされたコンポーネンツの集合体としてのクルマではなく、すべてが一体となった塊のように伝わってくる。どちらも一般道に迎合させるべく、フィエスタSTは若干、GTは相当に、エンジニアが妥協点を見出してはいるが、限界領域は危険を感じるほど高い。乗るほどに実感する、同じ血統を持つクルマの共通点だと思う。

2台を直接比較したとき、フィエスタSTはGTよりも星半分、高い評価を得られるのか。これは漠然とした問いだし、クラス内での相対的なもの、というのが率直なところ。フィエスタSTはこのクラスの中では秀でた優秀さを備えている一方で、GTは同クラスのライバルと比べても遥かに高価で、これ以上必要のないほど刺激的なドライブを味わわせてくれる。しかし、日常利用ができるほど煮詰められてはいない。

フォード・パフォーマンス社は歓迎すべきものだし、その存在感は当面揺るがないだろう。だが、メルセデス-AMGのハイパーカー、プロジェクト・ワンがラインオフすれば、バリエーションに富んだハイパフォーマンス部門としての孤高の地位は、ミシガン州ディアボーンを拠点とする企業から、バーデン・ヴュルテンベルク州アファルターバッハを拠点とする企業へ、移るはず。何しろ、F1のパワーユニットを搭載する200万ポンド(2億9600万円)のハイパーカーから、最近発表された3万5000ポンド(518万円)のハッチバック、A35までをラインナップするのだから。

今回の撮影を終え自問してみたが、フォードGTをもう一度ドライブしたいとは思わなかった。仮に資金があったとしても、購入することはないだろう。

フィエスタST。フォード・パフォーマンス社が生み出した、ファン・トゥ・ドライブで、より身近なクルマの素晴らしさを再確認したのだった。

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