マクラーレンF1 vs マクラーレン720S 比較試乗 伝説はいまも

公開 : 2019.06.08 11:50

コーナーでも素晴らしく 驚くべき結果

だが、F1はコーナーでも光り輝く存在だ。ダウンフォースなど存在しないが、最小限の車重と、現代のモデルと比べ、ボディの動きははるかに大きいものの、見事なグリップを備えたこのクルマで、何より素晴らしいのは、その驚異的なパフォーマンスではなく、サスペンションが沈み込む様子をそのままに伝えるステアリングかも知れない。

だが、ブレーキだけは、唯一25年という歳月を感じさせ、この点に関しては、ドライバーの努力が報われることはあまりない。

では、物理法則に抗って、数々の記録を塗り替えた、この25年前のマクラーレンを、現代のスタンダードなマクラーレンのミッドレンジモデルと比べた場合、どんな評価を下すことになるのだろう?

ダウンサイジングターボと、パドルシフトの登場が大きな違いをもたらしているが、それでも、この2台には、ハッキリとした共通点もあり、それは、カーボンファイバー製タブだけではない。見過ごされがちだが、この2台のキャビンでは、同じような解放感を感じることができるとともに、その優れた乗り心地も共通している。

キャビンの解放感と優れた乗り心地は、優れたロードカーとして、豪華な長距離ツアラーには欠くことのできない資質であり、720Sのステアリングにはパワーアシストが付くものの、油圧式を採用したそのステアリングフィールは、他のパワーアシスト付きモデルとは異なり、豊かなインフォメーションをドライバーへと伝えて来る。


F1の持つ栄光と価値、さらには悪名高きブランティングソープの荒れた路面に敬意を表し、この2台をサイド・バイ・サイドで競わせるようなマネはしなかったが、そんなことをせずとも、1994年の記念すべき1日と、2017年に行ったテストでこの2台の実力は明らかであり、その違いはさらに興味深いものだった。

720Sのほうがややパワフルかつ、トルクで大きく上回る一方、重量では281kgも重く、その結果、パワー・トゥ・ウェイト・レシオ、トルク・トゥ・ウェイト・レシオのいずれでも、F1のほうが良い数値を示している。

それでも、720Sのほうがよりフラットなトルク特性を備えており、アクセルを踏み込めば、その違いを体感することになるだろう。だが、より重要な点は、F1の記録は、現代とはまったく異なる製法で作り出されたタイヤを履いてのものであり、トラクションコントロールも無ければ、ローンチコントロールもなく、シフトはマニュアルだったというところにある。

こうした点を踏まえれば、0-274km/h加速におけるわずか1.5秒という差も、F1では、少なくとも4回のシフトチェンジによって、パワーの伝達が途切れたことを考えると、非常に驚くべき結果だと言える。

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