数年前のテスラ・モデルSの如きアドバンテージ ボルボES90 シングルモーター(2) 市街地なら無充電で700km

公開 : 2026.05.19 18:10

ボルボ初の電動サルーン、ES90。廉価グレードは333psの後輪駆動で、インテリアの高級感はクラス随一といえます。普段使いなら、無充電で700km狙える持久力も強み。UK編集部の評価です。

上級サルーンとして絶妙なパワートレイン

ボルボS90を置き換える、バッテリーEVのES90。今回は、後輪駆動で最高出力333psの、シングルモーターへ試乗した。0-100km/h加速は6.3秒が主張されるが、実際に計測したところ6.0秒を記録。エントリーグレードとしては、かなり鋭い。

パワートレインのバランスやリニアさは、上級サルーンとして絶妙。焦らず先を急ぐ、という特性に合致している。徐々にパワーが立ち上がり、直感的に加速でき、過剰さはない。充電量が減少しても、明確にパワーダウンしない制御も評価したい。

ボルボES90 シングルモーター・エクステンデッドレンジ・プラス(英国仕様)
ボルボES90 シングルモーター・エクステンデッドレンジ・プラス(英国仕様)

ブレーキペダルは、軽い踏み心地。もちろん摩擦ブレーキではなく、殆どの場面で電気エネルギーへの変換で速度が落とされる。その回生ブレーキは、強力なワンペダルと、自動的に調整されるアダプティブ、惰性走行可能なフリーホイールの3段階だ。

アダプティブ・モードは、周囲の状況で効きが変化するものの、制御の自然さはメルセデス・ベンツに及ばず。ワンペダルより、1段弱いモードが欲しいとも感じた。

安定性重視の操縦性に概ね快適な乗り心地

操縦性は、最近のボルボらしく優秀。コーナリングバランスは、基本的にはアンダーステアの安定性重視ながら、旋回中にアクセルペダルを踏み込むと、後輪駆動らしい挙動を味わえる。リアタイヤは幅が275もあり、トラクションは揺るぎない。

滑らかなステアリングは、ロックトゥロック3.1回転とスロー気味。しかし、ノーズの反応は予想より素早い。BMW i5のように機敏とはいえないものの、抑制されたボディロールと相まって、気持ち良くカーブを巡れる。一歩引いた、大人な雰囲気が好ましい。

ボルボES90 シングルモーター・エクステンデッドレンジ・プラス(英国仕様)
ボルボES90 シングルモーター・エクステンデッドレンジ・プラス(英国仕様)

通常のスプリングとダンパーながら、サスペンションは上下方向の動きを巧妙になだめ、乗り心地は洗練されている。ただし、路面の鋭い凹凸の処理はやや苦手な印象。ボルボとして、より快適性を突き詰めても良いのでは。

ウルトラ・グレードに装備されるエアスプリングなら、一層の上質さを享受できそう。心地良いシートと相まって、ジュニアベントレーのような印象を生むのではないだろうか。オプション価格は、1万ポンド(約210万円)だが。

市街地中心なら約700kmを無充電で走れる

運転支援システムは、極めて充実。発表時にルーフ中央へ突き出ていたレーザーセンサーは採用が見送られ、同等機能を車両各部のセンサーが担うようになっている。

車線維持支援は、ドライバーの運転特性を学習して制御されるが、試乗車では概ね滑らかに動作。制限速度監視は、音声かアクセルペダルの振動か、警告方法を選べて好ましい。高速道路では、車線合流も自然な、ほぼ自律運転と呼べる制御を叶えている。

ボルボES90 シングルモーター・エクステンデッドレンジ・プラス(英国仕様)
ボルボES90 シングルモーター・エクステンデッドレンジ・プラス(英国仕様)

ちなみに高速域では、フロントピラー周辺からの風切り音が目立った。生産初期にありがちな、ラバーシールなどの組付けの甘さが理由かもしれない。

電費は、普段使いを想定した走らせ方で8.0km/kWhと優秀。市街地中心なら、700kmは1充電で走れる計算になる。高速巡航も5.1km/kWhとクラストップレベルで、450km程は無充電で走れるだろう。急速充電は、現実的に300kW前後で可能だった。

記事に関わった人々

  • 執筆

    リチャード・レーン

    Richard Lane

    役職:ロードテスト副編集長
    2017年よりAUTOCARでロードテストを担当。試乗するクルマは、少数生産のスポーツカーから大手メーカーの最新グローバル戦略車まで多岐にわたる。車両にテレメトリー機器を取り付け、各種性能値の測定も行う。フェラーリ296 GTBを運転してAUTOCARロードテストのラップタイムで最速記録を樹立したことが自慢。仕事以外では、8バルブのランチア・デルタ・インテグラーレ、初代フォード・フォーカスRS、初代ホンダ・インサイトなど、さまざまなクルマを所有してきた。これまで運転した中で最高のクルマは、ポルシェ911 R。扱いやすさと威圧感のなさに感服。
  • 翻訳

    中嶋けんじ

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

ボルボES90 シングルモーターの前後関係

前後関係をもっとみる

関連テーマ

おすすめ記事