マクラーレン720S GT3Xへ試乗 ほぼGT3レーシングカー 750psに6速セミAT

公開 : 2021.11.13 08:25

サーキット仕様の720S GT3をマクラーレンが一般向けにチューニング。驚愕の能力を英国編集部が体験しました。

レギュレーションから開放されたGT3マシン

執筆:James Disdale(ジェームス・ディスデイル)
翻訳:Kenji Nakajima(中嶋健治)

 
思わず息を呑むような、このアグレッシブな見た目のクルマは、マクラーレン720S GT3Xという。サーキット走行会用の特別なマシンに見えるし、レーシングカーそのものにも見えるはず。

実態は、そのとおり。金額は相当なものだが、プロドライバー以外でもお金で買える、鮮烈なドライビング体験を与えてくれるマシンだ。富裕層に向けた、趣味の道具ともいえなくはない。

マクラーレン720S GT3X
マクラーレン720S GT3X

AUTOCARの読者なら、マクラーレン720S GT3についてはご存知かもしれない。簡単に要約すると、GT3Xはレギュレーションにとらわれず、GT3マシンの実力をフルに引き出したレーシングカーといえる。

500馬力以上のパワーをバランスさせるため、実践的なスリックタイヤと大きなリアウイングで武装。最高出力は標準で720ps。さらにGT3 Xでは、短時間だけだが、ボタン1つで750psまで高めることも可能になっている。

GT3Xのエンジンは、間口を広げるために、GT3仕様のユニットではない。マクラーレンのおなじみといえる、M840T型と呼ばれる4.0LのツインターボV8が搭載されている。

強化ピストンと専用ヘッドが職人によって組み付けられ、チタン製のエグゾーストシステムを採用。低回転域でのトルクと引き換えに、トップエンドでの熱狂的なパワーを実現するため、電子制御システムにも変更が施されている。

ドライブトレインにも抜かりはなく、リアタイヤへパワーを伝達するのは、Xトラック社製の6速セミオートマティック。シフトパドルも付く。トラクション・コントロールは、12段階から選択できるようになっている。

外観も内観も正真正銘のレーシングカー

それ以外の部分は、GT3マシンと考えて良い。タブシャシーもボディパネルも、GT3用のカーボンファイバー製だ。空力特性を強く意識したデザインに見とれてしまう。前後のサスペンションも、レーシングスペックとなる。

車内には複雑なロールケージが組まれているが、助手席を追加するため、GT3マシンから設計が変更されている。GT3Xを購入できるドライバーの場合、助手席にはインストラクターが座るのだろう。

マクラーレン720S GT3X
マクラーレン720S GT3X

マクラーレン720S GT3Xは、外から見ても中に乗ってみても、正真正銘のレーシングカーだ。でも、750psという規格外の最高出力のために、公式レースへの参戦は許されない。

今回の試乗で筆者の隣に座ってくれたのは、マクラーレン・レーシングチームのエースドライバー、ユアン・ハンキー氏。座る場所を交換する前、ハンキーはスペインのナバラ・サーキットで、目を剥くような走行を披露してくれた。

既にピレリ・タイヤとカーボンセラミック・ブレーキは充分に温まっている。今度は筆者がトライする番だ。

カーボン製のバケットシートに、ハーネスで身体が固定される。ペダルボックスとステアリングホイールの位置は調整可能で、背もたれが倒れ気味ながら、快適なドライビングポジションに落ち着いた。

手のひらが握るのは、トラクション・コントロールやABSの設定を変えるスイッチが並ぶ、操縦桿のようなステアリングホイール。力を抜いて一呼吸した頃、マクラーレンのエンジニアがエアジャッキの圧力を抜く。720S GT3Xが振動とともに着地する。

記事に関わった人々

  • 執筆

    ジェームス・ディスデイル

    James Disdale

    英国編集部ライター
  • 翻訳

    中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

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