アストンの栄光 DBSスーパーレッジェーラで行く追憶の旅 舞台はグッドウッド

公開 : 2019.06.22 11:50

無限の想像 偉大なGT

だが、こうした比較はフェアではない。確かに、DBR1は公道走行も可能(当時のスポーツカーは公道走行可能である必要があった)なマシンだが、DBSが得意とするような場所は苦手にしており、それはサーキットにおけるDBSも同様だ。

だからこそ、DBSではサーキットを限界まで攻め込のではなく、滑らかにコーナーを繋ぐような走りを選択するのであり、グッドウッドほどこうした走りに相応しい舞台はない。

そして、V12の艶やかな響きによって、ふたたびわたしは陶然とした魅惑の別世界へと誘われることとなった。

もはやわたしは、中年のアマチュアレーサーなどではなく、スポーツカーレースにおける究極の栄誉を求め、ポルシェフェラーリを追撃するスターリング・モスその人であり、時速209km/h以上のスピードでフォードウォーターのコーナーをドリフトしながらクリアすると、スライドしたまま4速ギアでセント・メアリーへと進入し、ラバントストレートを加速しながらゴールへと向かっている。


そのままトップでチェッカーフラッグを受け、燃え尽きたピット前を通過すると、観客席は熱狂し、ビクトリーランを終えたわたしには、ファンからの歓声が降り注いでいる。そして、無造作にゴーグルを引き上げ、エンジンを切って歓喜に沸くチームメイトの前でマシンを止めるのだ。

だが、現実は、存在しない静まり返った観客に向けて、アストン マーティンとしてはもっとも遅い周回を披露すると、そのままサーキット出口へと向かい、夢うつつのまま家に帰っただけだったのかも知れない。

まさに、これがDBSスーパーレッジェーラなのだ。このクルマはドライバーに無限の想像をさせる。どこへ向かおうと、そこで何をしようと、このクルマはドライバーの求めに見事に応えてくれる。

だからこそ、DBSスーパーレッジェーラは、DBR1が世界最高のレーシングカーの1台であるのと同じように、世界最高の偉大なGTの1台と呼べる存在なのだ。

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