3.0L V6ディーゼル+ハイブリッド アウディS4 試乗 346ps 広がるSの変化

公開 : 2019.08.11 09:50

2500rpm以上で噴火するように溢れるパワー

アクセルを踏み込むと、回転数が2000rpmまでは加速力は徐々に増していくという程度だが、2500rpmを超えるやいなや、エンジンの獰猛な側面が顔を出す。V6エンジンはやや人為的な低音を響かせつつ、まるで火山が爆発したかのように、暴力的といいたくなるほどの勢いで速度が増していく。味わえる時間は長くはないとはいえ、このクルマだけのスリリングな体験だ。

また実用性の面でも優れているのは明確。高速道路を走行するような場面では、エンジンは静かにクルマを進ませる。WLTP法で14.9km/Lという燃費も、自動車旅行の給油回数を減らしてくれる。

S4は車高が低められたスポーツサスペンションを装備するが、最も柔らかいモードを選んでいても、標準のA4と比較しても明確に乗り心地は硬い。だが、傷みの酷い路面を走行していても、それほど冷酷にドライバーを揺さぶるようなことはなく、長距離運転に尻込みしてしまう必要はない。むしろ、落ち着きのある、よくしつけられたクルマだといえる。

コーナリングは、安定していて粘り強いだけでなく、適正なタイミングでスロットルを開ければ、テールを流すことも可能。ダイナミックモードにすると、ステアリング操作には少し人為的な重みを感じるようになるものの、不安感のない明確な手応えを感じながら、クルマを操ることができる。

気になるディーゼルの受け止められ方

速度が速くなるにつれて、ステアリングのレスポンスも徐々にクイックに変化していく。慣れるまでは少し不安に感じるかもしれないが、すぐに順応できると思う。ただし、手のひらに伝わるフィードバックがほとんどないことは、いつものこととはいえ、残念ではある。

インテリアデザインも同時にリフレッシュされた。最新の10.1インチMMI+インフォテインメント・システムと、バーチャルコクピットは標準装備となり、先進のテクノロジーという、アウディの強みを高めている。

ライバルモデルを俯瞰してみよう。短時間ながら試乗した印象からすると、最新のBMW M340i xドライブは走りにこだわりのあるドライバーの有力な選択肢となってくるはず。一方で、メルセデス-AMGのV6ツインターボ・ガソリンが秘める獰猛な性格も、ドライバーによっては惹きつける要素となるだろう。

新しいアウディS4はといえば、気持ちが最も強く鼓舞されるクルマではないにしても、説得力は低くない。ハイブリッド・ディーゼルエンジンは少し浮いた内容ながら、その動力性能や扱いやすさは間違いなく素晴らしい。高速道路を走れば快適なクルーザーになりつつ、郊外のカーブが続く道を素早く駆け抜けることもいとわない。

パフォーマンス・サルーンとはいえ、ディーゼルエンジンを搭載したクルマに4万8000ポンド(652万円)は高い、という考えもあるかもしれない。しかしSQ5へ決定したアウディのエンジニアの考えが正しければ、新しいS4の需要は小さくないといえる。少し見守ってみようと思う。

アウディS4のスペック

価格:4万8000ポンド(652万円)
全長:4745mm
全幅:1842mm
全高:1407mm
最高速度:249km/h
0-100km/h加速:4.8秒
燃費:14.4km/L
CO2排出量:−
乾燥重量:1785kg
パワートレイン:V型6気筒2967ccターボ
使用燃料:軽油
最高出力:346ps/3850rpm
最大トルク:71.2kg-m/2500-3100rpm
ギアボックス:8速オートマティック

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