リマック EVメーカーとしての未来と過去 グランドツアーでの事故

公開 : 2019.09.23 11:45  更新 : 2019.09.23 14:25

技術力でEVの可能性を見せたBMW E30

リマック社の歴史は、いまのブランドイメージとはかなり異なる。フェラーリを打ち負かすハイパーカーを生み出すような要素はなかった。そもそも成功がはっきり見えないような企業に、投資家が大量の資金を投じることはない。大手自動車メーカーからクルマの製造委託を受けているような提携もない。

「創業当初は、本当に資金がありませんでした」 料金が払えず電気を止められた時もあったという。クロアチアには投資格付けがなく、自動車産業の国としての認知がなかったため、投資家を引きつけることが難しかったそうだ。

EV化されたBMW E30
EV化されたBMW E30

リマック社が当初から備えていたものはイノベーション。SF映画に出てくるような手を包むグローブから、沢山のワイヤーが伸びているデバイスが、本社ホワイエの展示ケースに飾られていた。iグローブと呼ばれるもので、マアテイの初期の作品。コンピューターへマウスやキーボードを使わずに、入力するもの。

そのデバイスで資金が回るようになると、マアテイの関心はクルマへと移っていく。1980年代のBMW 323iを改造し、人気のサーキットマシンへと生まれ変わらせた。E30型323iをEVに改造したクルマは、インターネットを通じて注目を集め、EVの可能性を示した。

「その映像は大手メーカーのキーマンの目にも触れ、われわれとの協働も可能か聞いてきたのです」 とロンジンが振り返る。マアテイは、自社モデルの製造を始めるために、EVのコンポーネントとソフトウェアの開発に注力していた。素晴らしいクルマのためには不可欠だと考えていたためだ。リマック社のビジネスモデルは特殊で、基本的に外部の自動車メーカーからの収益で成り立っている。

年間数台の生産でも従業員は550名

生産台数を比較するのも面白い。2018年、トヨタは世界合計で888万5533台のクルマを製造している。従業員は約37万人だから、デザイナーや受付けの人などもすべて含めると、1人あたり24台を年間製造していることになる。フェラーリでさえ1人あたり年間3台、1年で合計1万台弱が生まれている。

同じ計算を当てはめると、リマック社の従業員は年間0.0036台だ。Cツーが製造されると、0.06台に増える可能性はあるが、新たに従業員も増やされるから、そこまでは増加しないだろう。

リマックCツー
リマックCツー

もちろんリマック社の社員は遊んでいるわけではなく、エネルギーで満ちている。ロボットや生産ラインが無い代わりに、デルやレノボのPCが並び、若いスタッフが画面に向かって作業を続けている。

工場に入れば、バッテリーや正確にカットされたアルミニウム、オートクレーブ・マシンから出てきたばかりのきれいなカーボンファイバー製ボディを見ることができる。これらは、製造に対する投資を生み出すキッカケでもある。

マアテイは情熱的で革新的な発送を持っているが、550人を超える従業員を抱える鋭いビジネスマンでもある。スタッフの平均年齢は31歳だという。リラックスルームには、プレイステーションも用意されているのが今どきだ。建物は5棟に分かれており、面積は1万平方メートル。曲がりくねった廊下と階段が続く。

新しいキャンパスも数年の内に建設予定だという。クロアチアの国外への移転も投資家から進められたそうだが、マアテイはそれを拒否した。ロンジンは、CEOは何かを達成できないとしても、会社を構成する哲学を重要する人物だと話す。その思想からの努力として、リマック社のクルマ以外の様々な技術が誕生してきた。

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