リマック、ブガッティ向け全固体電池を開発中 軽量&高出力パワートレインで「革新」目指す

公開 : 2025.12.15 17:05

リマックの研究開発部門は全固体電池を開発中で、2030年発売予定のブガッティの新型車に搭載することを目指しています。今後も他社への供給を視野に、高性能の電動パワートレインを開発していく方針です。

広範囲にEV技術を開発

クロアチアの自動車メーカーであるリマックは、全固体電池、高出力のバッテリーパック、高性能パワートレインなどでEV業界に革命を起こそうとしている。最高執行責任者(COO)のヌルディン・ピタレビッチ氏は「スタートアップという立場からリマックを脱却させる」と力を込めた。

リマックは2022年、フォルクスワーゲン・グループとの提携によりブガッティ・リマックを設立した。以来、研究開発子会社のリマック・テクノロジーは、他社への供給も視野にEV技術を開発してきた実績がある。

リマック・テクノロジーは研究開発部門として独立している。
リマック・テクノロジーは研究開発部門として独立している。

その開発対象は、ハイブリッド用の小型バッテリーシステムから、基本部品を組み込んだローリングシャシーまで広範囲に及ぶ。電子システム、電動駆動ユニット、ユーザーインターフェース関連の開発も手掛ける。

全固体電池

ピタレビッチ氏はAUTOCARの単独インタビューで、新たな全固体電池の開発をすでに進めていると説明した。セルメーカーのプロロジウムや三菱などと共同開発し、2020年代後半の市場投入を目指しているという。

ピタレビッチ氏は、全固体電池の試験を間もなく開始するとの見通しを示し、2030年発売予定のブガッティの新型車へ採用することを「望んでいる」と述べた。

リマック・テクノロジーは高性能のEV部品の開発・供給に力を入れる。
リマック・テクノロジーは高性能のEV部品の開発・供給に力を入れる。    リマック

予測では、全固体電池のコストは2035年までに現在のニッケル・マンガン・コバルト(NMC)バッテリーと同等になるという。ただし、リマックには全固体電池を大量生産する意向はないが、他社への技術供与は「検討する」とした。

この全固体電池のプロトタイプは容量100kWhで、エネルギー密度は従来型より20~30%高いとされる。また、三菱が開発した軽量かつ超高剛性の複合材ハウジングにより、約30kgの軽量化を実現。充電速度や安全性も向上しているとのことだ。

リマックは高級車向けハイテク部品のサプライヤーとして評価を高めつつあるが、ピタレビッチ氏によると、『ネヴェーラ』以外の自動車製造に乗り出す可能性は低いようだ。

EV航続距離の最大化、安全性(特に火災安全性)の向上、充電時間の大幅短縮という3つの目標を掲げているが、いずれも全固体電池が持つ特性である。

EV・ハイブリッド車向けeアクスル

新開発のeアクスルは、電気モーター、トランスミッション、電子機器を軽量かつコンパクトなパッケージに統合。前輪駆動、後輪駆動、四輪駆動に対応し、200psから470psの出力を実現する。

ピタレビッチ氏は、このユニットがハイブリッド車とEVの双方に適している点を強調し、これまでの顧客としてBMWポルシェ、サウジアラビアのEVスタートアップ企業CEERを挙げている。他にも多くの顧客を抱えているが、その多くは匿名だ。

リマック・テクノロジーのeアクスル
リマック・テクノロジーのeアクスル    リマック

こうした動きは、クロアチア・ザグレブに建設中の総面積9万5000平方メートルの新工場(総投資額3億ユーロ=約550億円)と深く関連している。同施設では月間数万個のコンポーネントを生産する計画だ。

eアクスル技術の急速な進化について、ピタレビッチ氏は複数の事例を挙げた。1つは、CEERの新型高性能SUV向けに開発されたアセンブリだ。ネヴェーラのリアモーター(約1300ps)と同等の出力とトルクを持つとされるが、重量はネヴェーラの198kgに対し、わずか132kgである。

もう1つは、高性能クーペ、あるいはホットハッチを想定したと思われる超小型のパッケージだ。スーツケースサイズの500psパワーパックで、重量はわずか48kgとされる。

記事に関わった人々

  • 執筆

    スティーブ・クロプリー

    Steve Cropley

    役職:編集長
    50年にわたりクルマのテストと執筆に携わり、その半分以上の期間を、1895年創刊の世界最古の自動車専門誌AUTOCARの編集長として過ごしてきた。豪州でジャーナリストとしてのキャリアをスタートさせ、英国に移住してからもさまざまな媒体で活動。自身で創刊した自動車雑誌が出版社の目にとまり、AUTOCARと合流することに。コベントリー大学の客員教授や英国自動車博物館の理事も務める。クルマと自動車業界を愛してやまない。
  • 翻訳

    林汰久也

    Takuya Hayashi

    1992年生まれ。幼少期から乗り物好き。不動産営業や記事制作代行といった職を経て、フリーランスとして記事を書くことに。2台のバイクとちょっとした模型、おもちゃ、ぬいぐるみに囲まれて生活している。出掛けるときに本は手放せず、毎日ゲームをしないと寝付きが悪い。イチゴ、トマト、イクラなど赤色の食べ物が大好物。仕事では「誰も傷つけない」「同年代のクルマ好きを増やす」をモットーにしている。

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