ダイハツ、「普通車」投入の勝算は 穴場の小型国産SUV ロッキーの新しい使命

公開 : 2019.12.01 12:10  更新 : 2021.10.22 10:17

ロッキー、ダイハツの脱軽自動車を促進?

ロッキーの1か月の販売目標は2000台だ。トヨタに供給されるライズの4100台に比べると半数以下だが、ほかの車種に比べると多い。

現行ブーンが発売された時の月販目標は1000台で、トヨタに供給されるパッソの5000台に比べると、20%にとどまっていたからだ。

スズキ・スイフト
スズキスイフト

ロッキーの販売目標が増えた背景には、販売面の事情がある。トヨタの完全子会社になった後のダイハツは、以前に比べると、小型車の販売に力を入れるようになった。

ダイハツ・トールではTVCMも活発に放映され、2019年度上半期(2019年4〜9月)の登録台数は、1か月平均で2000台弱に達した。

この点についてダイハツの販売店では、次のようにコメントしている。

「ダイハツは軽自動車のメーカーとされていますが、需要は先行きが不透明です」

「先ごろの自動税の改訂では、1L以下の排気量を4500円値下げして年額2万5000円に抑えられました。それでも軽自動車税は1万800円と安いが、税制面の優位性が次第に薄れてきました」

「そしてスズキはスイフトなどの小型車にも力を入れています。ダイハツとしても、小型車を充実させる必要に迫られているのです」

2019年度上半期において、国内で販売されたダイハツ車のうち、軽自動車の比率は95%に達する。小型/普通車はわずか5%だ。

その点でスズキの軽自動車比率は82%だから、小型/普通車が18%になる。ダイハツも小型車比率を高めることをねらっており、ロッキーはその手段に位置付けられる。

ただしスズキとダイハツでは、決定的な違いがある。

スズキのスイフトやエスクードは自社のみで売られるが(ソリオ三菱にも供給されるが台数は少ない)、ダイハツのコンパクトカーはトヨタがOEM車として大々的に扱うことだ。

今のダイハツは、以前のシャレードのようなダイハツ専売の小型車を用意していないから、売れ行きを伸ばしにくい。

同じベース キモはダイハツ/トヨタ差別化

ロッキーの開発者は、取り巻く市場環境について、以下のようにコメントした。

「トヨタのライズは、ヴォクシーのようなミニバンのお客様、あるいはC-HRのようなSUVから乗り替えるダウンサイジング需要が期待されます」

トヨタ・ライズ
トヨタ・ライズ

「これに比べてダイハツの場合は、軽自動車を保有するお客様が多いため、アップサイジングのニーズも考えられるのです」

「そこでロッキーには、最上級グレードのプレミアムを設けた。ロッキーとライズで同じお客様を奪い合うのではなく、異なる顧客層をねらっていきたいです」

ロッキーのプレミアムは、ソフトレザー調のシート表皮を使うなど、ライズとは異なる内装が特徴になる。アップサイジングするユーザーは、5ナンバーサイズの中で、上質さを求めるからだ。

特に今は軽自動車の内装がよくなっているから、ロッキーが普通の造りでは、乗り替えてもアップサイジングした気分を味わえない。ソフトレザー調シート表皮などが不可欠になる。

外装色もロッキー専用のコンパーノレッドを用意した(ライズはターコイズブルーを設定)。さらにフロントマスクの見栄えもライズとはかなり違う。

ロッキーは5ナンバーサイズに収まるコンパクトSUVながら、角張った水平基調の外観はオフロードSUV風でもある。好調に売れるRAV4をコンパクトにしたようなイメージだ。

今後ダイハツが独自のドレスアップされた特別仕様車を設定するなど、魅力的な展開を図れば、ロッキーは売れ行きをさらに伸ばせるだろう。

この経験を商品開発に幅広く生かせば、ダイハツはトヨタとは違う小型車のブランドイメージを築けるかも知れない。そのためには独自の魅力をいかに表現するかが大切だ。

最も大切なことは、ベースとなるクルマ造りをしっかりと行うことだろう。素性の優れたクルマであれば、ドレスアップなども効果を発揮して、プレミアム感覚をさらに高められる。

記事に関わった人々

  • 渡辺陽一郎

    Yoichiro Watanabe

    1961年生まれ。自動車月刊誌の編集長を約10年間務めた後、フリーランスのカーライフ・ジャーナリストに転向した。「読者の皆様にケガをさせない、損をさせないこと」を重視して、ユーザーの立場から、問題提起のある執筆を心掛けている。買い得グレードを見極める執筆も多く、吉野屋などに入った時も、どのセットメニューが割安か、無意識に計算してしまう。

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