【たった2年で廃止】なぜ? メルセデス・ベンツのピックアップ「Xクラス」失敗の舞台裏

公開 : 2020.02.12 11:50  更新 : 2021.10.09 23:55

そもそもメルセデス・ベンツが「Xクラス」と呼ばれるピックアップトラックを作っていたことをご存知だったでしょうか? 日本には未導入で、たったの2年で廃止になりました。「失敗の舞台裏」を探ります。

Xクラス失敗 やはり、という声が多い?

text:Kenji Momota(桃田健史)

「Xクラスが、2020年5月に生産中止が決定」

ドイツの自動車メディアが2020年1月末に伝えた後、欧米メディアの問い合わせに対して、ダイムラー本社が事実であるとを認めた。

メルセデス・ベンツXクラス
メルセデス・ベンツXクラス

2017年に2018年モデルとして発売以来、イヤーモデルとしては2年で廃止となる。メルセデス史上、稀にみる失敗だ。

日本の方は当然、CやEクラスは知っていても、日本未導入のXクラスをほぼ知らないはずだ。Xクラスが、ピックアップトラックだと言われてもピンとこないはず。

メルセデス・ベンツがなぜ、Xクラスを開発し、日本ではXクラスが導入されなかったことについても、理解できないはずだ。

こうした日本人が抱く、Xクラスへの無名度の高さ、または仮にXクラスの存在を知っていたとしても、メルセデスブラントとXクラスとのミスマッチに対する違和感こそが、Xクラス失敗の証明だと思う。

世界中のメディアがXクラスの取り扱いについて、これまで苦労してきた。

Xクラス発表以来、世界各地のモーターショーなどで海外メディアと意見交換すると、「Xクラスという存在自体にかなり無理があるのでは?」という声を多く聞いた。

各国メディアのXクラス試乗記を見ても、「日産車をわざわざメルセデスと名乗ることに対する違和感」を示す、かなり手厳しい内容が多かった。

Xクラス、なぜ中身が日産なのか?

始まりは、2010年。ダイムラーと日産・ルノーアライアンスとの間で交わされた、資本業務提携だ。

「両社が得意とする技術領域を共有することで、Win-Win体制を実現する」として、当時のカルロス・ゴーンとディーター・ツェッチェ両CEOが堅い握手を交わした。

ベースとなった「日産ナバラ」
ベースとなった「日産ナバラ」

ダイムラーからはインフィニティへのエンジン供給など高級車への各種対応。対する日産からダイムラーには、小型車と商用車の開発技術やエンジン供給を行うとしていた。

その一環が、ピックアップトラック「日産ナバラ」のダイムラーバージョンの企画だ。これが、Xクラスである。

メルセデスのピックアップトラックといえば、2000年代の米ロサンゼルスモーターショーで毎年開催されていた、自動車メーカー各社の北米デザイン開発拠点による将来モデルのイメージコンテストで、ハードなオフロード走行にも耐えゆるスリーポインテッドマークのフルサイズピックアップトラックが発表されていた。

当時、ダイムラーのデザイナーに話を聞くと「あくまでもイメージだ。ピックアップトラックの販売量が多い、ここアメリカ向けの発想だが、実際にメルセデスというブランドとして、ピックアップトラックで収益を上げることは難しいと思う」と本音を漏らした。

その10数年後に登場したXクラスには、北米販売計画がなかった。

記事に関わった人々

  • 桃田健史

    Kenji Momota

    過去40数年間の飛行機移動距離はざっと世界150周。量産車の企画/開発/実験/マーケティングなど様々な実務を経験。モータースポーツ領域でもアメリカを拠点に長年活動。昔は愛車のフルサイズピックトラックで1日1600㎞移動は当たり前だったが最近は長距離だと腰が痛く……。将来は80年代に取得した双発飛行機免許使って「空飛ぶクルマ」で移動?

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