【みんなのスポーツカー】ホンダS800 フィアット・スポーツ MGミジェット 前編

公開 : 2020.04.19 07:50  更新 : 2020.12.08 11:05

ホンダを高回転域まで回す楽しみ

ひと回り車内は小さいものの、ややオフセットしたドライビング・ポジションと、スカットルシェイクのわずかな振動は、MGオーナーならお馴染みの内容。一方でS800のドライビング体験は、存在感の強いエンジンが中心となる。

レブカウンターは1万1000rpmまで切ってある。クルマ好きなら、ニヤリと頬を緩めるに違いない。走り始める。初めのうちは、ギアのメカニカルノイズに、カムのカチカチというノイズが重なる。

ホンダS800スポーツ(1966年−1970年)
ホンダS800スポーツ(1966年−1970年)

4速MTのシフトレバーは小さいが正確。トグルスイッチを弾くように、変速が決まる。クラッチを踏む際は、アクセルをしっかり離しておかないといけない。

回転域の中心より下のあたりに、若干フラットな領域がある。だがツインカム・ヘッドとクワッド・キャブレターのおかげで、鋭さをすぐに取り戻し、2速で5000rpmまで回すと56km/hに届く。

低回転域ではロータリーエンジンのように荒々しく、小悪魔のよう。レブカウンターの針を9000rpm目指してアクセルを踏み込めば、急襲戦闘機のようなけたたましい高音を響かせる。

ホンダは5速目がない。いや、いらない。高回転域まで回す楽しみが削がれてしまう。折角の興奮が薄れてしまう。

バイクがシフトアップする間際のような、鋭いサウンドを響かせるホンダ。その響きは、英国人も魅了することになった。

ブレーキはシャープで良く効くが、フィーリングはイマイチ。ステアリングのように。コーナーへ侵入しスロットルを戻すと、弾けるようなオーバーラン・ノイズが放たれる。

ベルトーネ・デザインの850スポーツ

乗り心地は良い。幅の狭いS800はコーナーでわずかにロールするが、巻き込むように旋回し、フロントが僅かに浮き上がる程度。

動的な性能は悪くはないものの、シャシーの主な仕事は、エンジンの個性を引き出すこと。今回の3台では最小の排気量から、最大のパワーを引き出すためにある。

フィアット850スポーツ・スパイダー・シリーズIII(1965年−1973年)
フィアット850スポーツ・スパイダー・シリーズIII(1965年−1973年)

一方のイタリアでは、自動車チューナーとコーチビルダーが、メーカーの作ったクルマを素材に良い仕事を展開していた。スポーツカーの輸出に目が向けられていたフィアットも、その事には気づいていた。

アバルトやシアタ、モレッティといった多くの企業が、フィアットをベースに新しいボディを装着したり運動性能を高め、オリジナルモデルを生み出していた。生産台数は限られていたけれど。

そんな中で、1965年に誕生したフィアット850スポーツのベースとなったのは、プロジェクト100G。1955年のフィアット600から、850へと進化したモデルで、シムカ1000へ対抗する目的で設計された。

フィアット850にはサルーンのほか、ムルティプラの後継モデルとして1ボックスのファミリアーレも存在した。このれらの850はフィアット社内での設計・製造だったのに対し、843ccの小さなクーペとスパイダーは、ベルトーネ社によって設計から製造までが行われている。

今回のスパイダーは、英国からの特別注文でのみ購入できたことも特徴。艷やかなボディは、リアエンジンのレイアウトを、最大に活かしていることがわかる。

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