【いまも別格の存在?】W124型Eクラス・ワゴン 手に入れるならいま 後編

公開 : 2020.05.10 11:20  更新 : 2021.01.30 21:14

2008年当時、W124型Eクラスを「世界最高のユーズドモデル」と評価した英国版AUTOCARですが、いまもその状況に変わりはないのでしょうか? その答えを見つけるべく当時の担当スタッフがふたたびこのクルマのステアリングを握りました。

時間を超越したモデル 溢れる威厳

さらに12年前、まだ路上に数多くのW124型Eクラスがひしめき合っていた時に見たよりも、高級で時代を超越した存在だと感じさせるのだ。

キャビンは古き良き時代を思い起こさせるとともに、当時は最高級モデルでさえ、どれほどシンプルな装備だったかを思い出させてくれる。

シンプルなスイッチ類。
シンプルなスイッチ類。

アームストロング所有のこのE320には望ましいオプションがすべて揃っていた。

レザー内装と電動式サンルーフ、電動パワーシート、純正エアコンに加え、ギアボックスはスタンダードな4速に替えて5速オートマティックトランスミッションが採用されている。

それでも、このクルマのウッドパネルに居並ぶボタンの数は、最新モデルのステアリングに設けられたものよりも少ないのだ。

柔らかいがサポート能力は必要最小限に留まるシートはまるで慣れ親しんだ肘掛け椅子のようであり、このクルマのドライビングはすべてが記憶にあるとおりの威厳に満ち溢れていた。

編集予算で購入したW124のあと、個人的に手に入れた車両はベーシックな2.2Lの4気筒モデルだった。

6気筒モデルの魅力 いまも十分なパフォーマンス

確かにこの4気筒モデルもスタイリッシュさと高い実用性を両立してはいたが、6気筒エンジンのサウンドと力強さに欠けたこのクルマのことを、「正しい」W124だと感じたことは一度もなかった。

6気筒エンジンには豊かなトルクだけでなく、ひとたびトランスミッションがキックダウンを行ったり、一段低いギアへとシフトすれば、ドライバーを驚かせるほどの活気を見せてくれた。

W124型Eクラス・ワゴン(4気筒モデル)
W124型Eクラス・ワゴン(4気筒モデル)

それでも決して俊足ワゴンなどではない。

時代の移り変わりが明らかにしたことのひとつが、交差点でのスタートダッシュやラウンドアバウトで現代の交通の流れについていくため、このクルマの踏み応えのあるスロットルペダルをどれほどハードに踏み込む必要があったかということだった。

それでもこうした点を除けば、このクルマのパフォーマンスはその威風堂々とした姿に相応しいものであり、同様に快適性と必要以上のダイナミクス性能などほとんど求めていないシャシーも、これで十分な仕上がりだと感じさせた。

アームストロング所有のE320の最初のオーナーは、サスペンションを締め上げるとともに車高を下げ、15インチのアルミホイールに205サイズのタイヤを組み合わせたスポーツラインを選択している。

真に傑出したエンジニアリング 偉大なデザイナーの最高傑作

現代の基準で見れば、頼りないフロントグリップと例えユックリとしたスピードであっても明確なロールを伴うこのクルマはソフトに感じられるが、そんなことはまったく問題ではない。

ボディロールを好むW124はリラックスした長距離クルーザーであり、荒れた路面にも滑らかさを失わないその洗練性は、現代の基準でも驚くべきレベルに達している。

開口部が広くフラットなフロアのW124の荷室。
開口部が広くフラットなフロアのW124の荷室。

このクルマの真に傑出した点は12年前と何も変わることはない、その明らかなエンジニアリングレベルの高さにある。

このクルマのエンジニアリングの見事さは、「魔法のような」シングルワイパーにも見て取ることが出来る。

巧みな機構でフロントウインドウの端まで見事にふき取ることが出来るこのワイパーは、いまもケーニグセグが採用しているほどだ。

さらに、テールゲートを保持するためのダンパーは、まるでピラーの中に隠れるように設置されている。

コンディション不良のW124が路上から消え去ったことで、このクルマの優雅でシンプルなデザインの素晴らしさがより明確になっている。

ブルーノ・サッコは20世紀後半を代表する偉大な自動車デザイナーのひとりだが、このEクラス・ワゴンは彼の最高傑作のひとつと言えるだろう。

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