【現役デザイナーの眼:フェラーリ・ルーチェ】アップル製品のデザイン経験者ふたりが参加 インテリアはミニマルで質感高し

公開 : 2026.03.02 12:05

現役プロダクトデザイナーの渕野健太郎によるデザイン分析。今回取り上げるのは、『フェラーリ・ルーチェ』です。全貌は5月まで待たなければなりませんが、今回公開されたインテリアだけでもずいぶん革新的な仕上がりのようです。

プロダクトデザイン界を代表するふたり

ブランド初のEVである『フェラーリ・ルーチェ』のインテリアに衝撃を受けました。

1970年代のようなシンプルで細身のステアリングホイール、四角く精緻なメーターユニットや中央のディスプレイ、センターコンソールやシートに至るまでのミニマルなデザインが、まるで近年のフェラーリとは異なっていたからです。

ブランド初のEVである『フェラーリ・ルーチェ』のインテリアが発表されました。
ブランド初のEVである『フェラーリ・ルーチェ』のインテリアが発表されました。    フェラーリ

このデザインを担当したのは、スティーブ・ジョブズ黄金期のアップルを支えていたジョナサン・アイブと、世界的プロダクトデザイナーであるマーク・ニューソンが共同で設立したユニット『LoveFrom』によるものです。まずはこのふたりから紹介します。

1998年、アップルはスティーブ・ジョブズが復帰して初めての新製品『iMac』を発表しましたが、その当時からデザインを指揮していたのがジョナサン・アイブです。

それまでMacと言えば、主にデザインなどのプロユースが中心で、多くの方にとってはマニアックなPCでした。しかしiMacは、インターネットの普及を鑑み、一般ユーザーをターゲットに製品開発。それまでのビジネスライクなPCから、丸みを帯びたシルエットとスケルトン素材という衝撃的なデザインでした。

また、低価格ということもあって、瞬く間に世の中に広がったのを覚えています(余談ですが、USBはこの初代iMacが搭載したおかげで広まったとされています)。

マーク・ニューソンは日本でも活躍したデザイナー

スケルトンデザインはPC業界のみならず、家電全般にも多大な影響を与えました。これ以降アップルはiPod、iPhone、iPadなど、画期的で使いやすいGUI(グラフィカル・ユーザー・インターフェイス)や高精度な金属加工技術によるミニマルなデザインが好評で、一躍トップ企業になったのはご承知の通りです。

マーク・ニューソンは、2003年auの携帯電話『talby』のデザインなどで日本でも活躍したデザイナーですが、実は1999年東京モーターショーで発表されたフォードのコンセプトカー、『021C』も手がけています。

こんなシンプルなステアリングは久しぶりに感じます。一見レトロなメーターですが、表示はデジタルです。
こんなシンプルなステアリングは久しぶりに感じます。一見レトロなメーターですが、表示はデジタルです。    フェラーリ

レトロモダンなデザインは当時センセーショナルで賛否両論ありましたが、そのポップで有機的なフォルムは彼のデザインテイストであり、ずっと不変。造形的アイコンを生み出す力に長けています。アップルにおいてアイブとも仕事をしており、『アップル・ウォッチ』のデザイナーだと聞けば021Cとの共通点も理解出来るでしょう。

そのようなプロダクトデザイン界を代表するふたりの新たな挑戦が、『フェラーリ』という自動車メーカーの中で最も崇拝され、最も自動車らしいブランドというのも面白いですよね。

記事に関わった人々

  • 執筆

    渕野健太郎

    Kentaro Fuchino

    プロダクトデザイナー兼カーデザインジャーナリスト。福岡県出身。日本大学芸術学部卒業後、富士重工業株式会社(現、株式会社SUBARU)にカーデザイナーとして入社。約20年の間に様々な車をデザインする中で、車と社会との関わりをより意識するようになる。主観的になりがちなカーデザインを分かりやすく解説、時には問題定義、さらにはデザイン提案まで行うマルチプレイヤーを目指している。
  • 編集

    平井大介

    Daisuke Hirai

    1973年生まれ。1997年にネコ・パブリッシングに新卒で入社し、カー・マガジン、ROSSO、SCUDERIA、ティーポなど、自動車趣味人のための雑誌、ムック編集を長年担当。ROSSOでは約3年、SCUDERIAは約13年編集長を務める。2024年8月1日より移籍し、AUTOCAR JAPANの編集長に就任。左ハンドル+マニュアルのイタリア車しか買ったことのない、偏ったクルマ趣味の持ち主。

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