【インド横断2700km】58年前のヒンドスタン・アンバサダー 予想外に楽しいドライブ 後編

公開 : 2020.11.07 16:50  更新 : 2020.12.08 08:40

のんびり走り絵画のような景色を堪能

当初は北のムンバイまで向かい、東南に進路を変え、東海岸のチェンナイを目指す予定だった。しかし一般道の楽しさと、状態の良くない高速道路という事情を知り、ルートを変更。スマートフォンで目的地を順に選び、下道を進むことにした。

この考えは大正解。のんびりとクルマを走らせながら、絵画のような景色を堪能できる。小さな村の路肩に建つ、崩れそうな小屋で出てくる料理も、素晴らしく美味しかった。

ヒンドスタン・アンバサダーMkI(1957年〜1962年)
ヒンドスタン・アンバサダーMkI(1957年〜1962年)

州をまたぐ検問所で、若い役人が叫ぶ。「12本もビールを持っています」。別の州へアルコールを運ぶことは、インドでは違法らしい。上司は退屈そうに、旅人のわれわれを見逃してくれた。

内地へ進み、バンガロールの町に入る。ここには美味しい地ビールと、混乱を招く信号機があった。信号機は人間的な交通の流れを乱し、渋滞を作っていた。

さらに東へ進み、クリシュナーギリを通過。東海岸へ出て、かつてフランス領だったポンディシェリーの街へと向かう。

アンバサダーは止まることなく走り続けた。永遠に壊れないのではないか、という印象を強めるように。

外気温が35度を超えても、水温に異常はなし。グーグル・マップがオフロードを指定しても、見事な走破性を披露してくれた。

旅の途中に施した修理は、クラクションとエギゾーストの割れ程度。ステアリングホイールは、ガタが出てきて組み直したが、それくらいで済んだ。

インドという土地に調和したクルマ

われわれと1962年式のヒンドスタン・アンバサダーは、予定日通りに東海岸の港町、チェンナイに到着。目指していたホテル、マドラス・ボートクラブの芝生に座り、ジントニックでゴールを祝った。

カーコレクター、スリ・スリバルダンという男性の出迎えを受ける。約2700kmに及ぶ旅を振り返る。

ヒンドスタン・アンバサダーMkIでの旅の様子
ヒンドスタン・アンバサダーMkIでの旅の様子

インドは期待通り、活気に溢れ、多様で親切で、美味しいものにも沢山出会えた。そして予想外にも、素晴らしいドライブルートがあり、ヒンドスタン・アンバサダーの運転を堪能させてくれた。

アンバサダーは、インドの環境と一体になっていた。快適で経済的で、信頼性が高い。舗装の良い現代的な交通にも問題なく溶け込め、未舗装路では埃を巻き上げながら見事に走った。

ヒンドスタン・アンバサダーが、50年以上も生産された理由を体験できた。インドという土地に、完全に調和したクルマだったのだ。

ヒンドスタン・アンバサダーMkI(1957年〜1962年)のスペック

価格:新車時 1万5091ルピー/現在 5000ポンド(67万円)以下
生産台数:−
全長:4361mm
全幅:1651mm
全高:1603mm
最高速度:119km/h
0-97km/h加速:29.0秒
燃費:9.6km/L
CO2排出量:−
乾燥重量:1114kg
パワートレイン:直列4気筒1489cc自然吸気
使用燃料:ガソリン
最高出力:50ps/4200rpm
最大トルク:10.2kg-m/3000rpm
ギアボックス:4速マニュアル

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