特別な機会に振る舞うご開帳 究極のマツダ・ロードスター限定車『12R』を通じてわかった、原盤の尊さ(後編)【渡辺敏史が吟味】

公開 : 2026.07.06 11:50

200台限定で発売され、既に完売した『マツダ・スピリット・レーシング・ロードスター12R』を渡辺敏史が取材します。究極とも言える2Lモデルを通じてわかった、原盤=1.5Lモデルの尊さとは。その後編です。

昔ながらのスパイラルとはちょっと違う

マツダスピリット・レーシング』(以後MSR)銘柄として開発されたロードスターのうち、スポーティネスを徹底的に高めた『12R』に乗ると、(前編で述べた)そういう昔ながらのスパイラルとはちょっと違うところにクルマがあることが伝わってくる。

最大の理由はアシの動きの良さだ。アドバン・ネオバ級をしっかり履けるほどの横耐性がありながら、タウンスピードでも乗り心地に不満は抱かない。それほどよくアシが動いている。

ロードスター12Rは、最もスーパー耐久仕様に近いと謳われるレーシィなモデルだ。
ロードスター12Rは、最もスーパー耐久仕様に近いと謳われるレーシィなモデルだ。    山本佳吾

バネやスタビといった金物がカタログモデルより締め上げられていることは間違いないが、それはバキバキというわけではなく、節度のあるレートだ。

そこにボディの剛性強化も加わるが、これもガチガチに固め尽くされている感はない。そして12Rならではの施しとして、熟練工による1G締めのサスアーム組み付けやアライメント取りが加えられていることもあってか、ダンパーの減衰が微入力域からしっかり立ち上がっている。

最もスーパー耐久仕様に近いと謳われるレーシィな12Rであっても、抜き差し加減が巧く配されている、そこがこの乗り味の秘密だろう。

アクセル操作ひとつでこなす安楽さ

ちなみに自分は12Rではない標準のMSRロードスターにも試乗しているが、サスセットのみならずボディ剛性、タイヤ、シートなどの違いも相まってだろう、その乗り味は12Rにもまして公道適性が高い。

なんなら快適性はカタログモデルのRSよりも上ではないかと思わせる振る舞いを、低速域からみせてくれる。

標準のマツダ・スピリット・レーシング・ロードスターは、2200台限定で発売された。
標準のマツダ・スピリット・レーシング・ロードスターは、2200台限定で発売された。    マツダ

その快適性という点に大いに貢献してくれるのが、特徴でもある2LのPE-VPRユニットだ。MSRロードスターには充分以上の力感で、特に低中回転域のトルクの厚さは1070kgの体躯を苦もなく押し出してくれる。

ワインディングを気負わず流したり、高速巡航で前車を追い抜いたりと、ありがちな場面をアクセル操作ひとつでスイスイとこなしてくれるこの安楽さは、やはり1.5Lには望めない。そんな一面を端的に切り取れば、GT的な側面も高めているのがMSRロードスターの特徴ともいえるだろう。

そこに前述のチューニングメニューを加えた12Rのユニットは、MSRロードスターに比べると、特に中高回転域にかけてそのフィーリングを大きく異にしている。

回して飛ばしてナンボではない

3000rpm向こうからのパワーの乗り、そして16ps増しの200psを発揮する7200rpm前後に至るところのパワーの伸びなどは、明らかに12Rならではの感触だ。

いにしえのVTECのようにパチンとスイッチングしたような性格の変化ではなく、むしろシームレスに二次曲線的な盛り上がりが体感できるところが、きっちり同調やバランスが取れたチューニングエンジンのようで気持ちいい。

12Rの重量は1050kgと標準モデルより20kg軽い。
12Rの重量は1050kgと標準モデルより20kg軽い。    山本佳吾

じゃあ12Rは回して飛ばしてナンボのクルマなのかといわれれば、そんなわけでもない。MSRロードスターに比べればごく低回転域のトルクは痩せているかもしれないが、それを補えるのが2Lのキャパシティだ。

加えて12Rの重量は1050kgとMSRロードスターより20kg軽い。ちなみに1.5LのロードスターRSは1040kgと大きくは変わらない。フライホイールはシングルマスながらも極低回転域からの粘りは充分で、ギアをポンポンと上げての低回転を多用するような走りでもまったくストレスなく扱える。

記事に関わった人々

  • 執筆

    渡辺敏史

    Toshifumi Watanabe

    1967年生まれ。企画室ネコにて二輪・四輪誌の編集に携わった後、自動車ライターとしてフリーに。車歴の90%以上は中古車で、今までに購入した新車はJA11型スズキ・ジムニー(フルメタルドア)、NHW10型トヨタ・プリウス(人生唯一のミズテン買い)、FD3S型マツダRX-7の3台。現在はそのRX−7と中古の996型ポルシェ911を愛用中。
  • 撮影

    山本佳吾

    Keigo Yamamoto

    1975年大阪生まれ。阪神タイガースと鉄道とラリーが大好物。ちょっとだけ長い大学生活を経てフリーターに。日本初開催のWRC観戦をきっかけにカメラマンとなる。ここ数年はERCや欧州の国内選手権にまで手を出してしまい収拾がつかない模様。ラリー取材ついでの海外乗り鉄旅がもっぱらの楽しみ。格安航空券を見つけることが得意だが飛行機は苦手。
  • 編集

    平井大介

    Daisuke Hirai

    1973年生まれ。1997年にネコ・パブリッシングに新卒で入社し、カー・マガジン、ROSSO、SCUDERIA、ティーポなど、自動車趣味人のための雑誌、ムック編集を長年担当。ROSSOでは約3年、SCUDERIAは約13年編集長を務める。2024年8月1日より移籍し、AUTOCAR JAPANの編集長に就任。左ハンドル+マニュアルのイタリア車しか買ったことのない、偏ったクルマ趣味の持ち主。

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